極低出生体重児の乳幼児期の発達

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  • ―合併症の有無と発達の関連について―

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【目的】早産児であることの多い極低出生体重児の育つ環境は胎内環境と比較し、多くのストレスを受ける環境といえ、今後の発達に何らかの影響を及ぼす可能性があると考えられる。そこで、今回は極低出生体重児の発達について、発達予後に影響しやすいと思われる疾患を除き、早産児由来である本来の発達予後について検討した。<BR>【対象と方法】当院小児科を受診し(2000.1から2004.7生まれ)、出生体重1500g未満、当センターで発達評価を受けた極低出生体重児143名(脳性麻痺除く)。全症例の在胎週数の中央値29週(22週5日から36週6日)、出生体重の中央値1084g(416から1498g)であった。<BR> 発達に影響しやすいと思われる下記合併症を認めた症例(A群)、全症例からA群を除いた症例(B群)の発達を比較した。発達に影響しやすいと思われる合併症は、脳室上衣下出血、クモ膜下出血、低酸素性虚血性脳症、脳室周囲白質軟化症、頭蓋内出血、新生児仮死、水頭症、脳梁欠損、髄膜炎、脳奇形、新生児痙攣、骨関節疾患、神経筋疾患、失明またはそれに近い予後の未熟児網膜症または白内障、慢性肺疾患、SFD、循環器疾患(手術適応でない心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症を除く)である。発達評価は新版K式検査(発達指数:70以上85未満は境界、70未満は遅滞)を用い、全領域の発達指数にて検討した。評価時期は修正4ヶ月、修正7ヶ月、修正12ヶ月、修正18ヶ月、暦24ヶ月、暦36ヶ月である。統計学的検討について、発達指数の検定はFisher's exact test(有意水準5%)、在胎週数および出生体重の検定はMann Whitney U test(有意水準5%)を用いた。<BR>【結果】A群は66名、在胎週数は中央値29週1日(22週5日から35週4日)、出生体重は中央値1003g(416から1492g)であった。B群は77名、在胎週数は中央値28週6日(24週2日から36週6日)、出生体重は中央値1172g(556から1498g)であった。A群とB群に在胎週数は有意差がなく、出生体重はB群が有意に大きかった。<BR> A群において、発達検査で遅滞または境界を呈した児は、4ヶ月:4.8%、7ヶ月:12.1%、12ヶ月:29.2%、18ヶ月:14.7%、2歳:34.4%、3歳:15.8%であった。B群において発達検査で遅滞または境界を呈した児は、4ヶ月:1.3%、7ヶ月:4.2%、12ヶ月:11.3%、18ヶ月:12.2%、2歳:21.7%、3歳:22.7%であった。A群、B群間の比較において、修正12ヶ月のみ有意差を認めた。<BR>【考察】発達に影響しやすいと思われる合併症を認めた症例群は、修正12ヶ月において発達が遅延する傾向を認めたが、他の時期では有意差を認めなかった。このことより、将来の発達に影響しやすいと思われる合併症の有無に関わらず、早産児由来そのものが発達に影響を持つことが示唆された。<BR>今後、極低出生体重児を含めた早産児に対して、長期に渡るフォローアップとともに、疾患対象だけでなく、新生時期に児をストレスの多い環境から守ることにより、発達予後を改善するか否か検討を加えたい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564570496
  • NII Article ID
    130005012393
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.b0262.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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