憤怒発作を伴う二分脊椎症児のリハビリテーションの経験

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抄録

【はじめに】重症新生児室に出生直後から入院している二分脊椎症の女児に対し、約2年10ヶ月間継続してリハビリテーションを行なっている。今回、憤怒発作とリハ経過に着目し報告する。<BR>【症例紹介】2000.10.17生まれ、4歳1ヶ月の女児。診断名は、脊髄髄膜瘤術後、キアリ奇形、水頭症。V-Pシャント術、気管切開術等約10数回の手術歴あり。<BR>【リハビリテーション経過】<BR>2002年1月、リハビリテーション開始。1歳3ヶ月、定頚不十分、座位保持困難。四肢・体幹共に低緊張で、殆ど背臥位で過ごしていたが、自分で足を持ち上げたり手を動かしたりする動作は認められた。人見知りが強く、母親や看護師以外、初対面の相手に対しては啼泣する。泣くと、憤怒発作が出現、数秒でチアノーゼを起こし四肢が伸展痙攣し意識消失及び呼吸停止するが、アンビュー加圧で数秒以内に意識・呼吸が戻る。憤怒発作を起こさないよう留意しながら定頚訓練、座位訓練、寝返り訓練など行うも、度々発作が認められた。同年8月、1歳10ヶ月時に、ベッド以外の場所で、長く安全に抗重力肢位をとる目的で、座位保持椅子を作製。作製するタイミングとしては、PTと訓練に慣れが生じ、好き・嫌い等の感情表現が出てきた時期である。受け入れは良好で、毎日ビデオを観る時に座位保持椅子を使用することが日課となった。2003年4月、2歳6ヶ月、足を投げ出してのお座りが、一人で短時間いられるようになった。頻回だった憤怒発作も1日数回となり、リハ中の発作は殆どなくなった。2003年10月、2歳11ヶ月、骨盤帯付長下肢装具を作製。立つことに対する楽しさに興味を示し、装具を装着しての立位訓練は、15~20分程度であれば嫌がることなく実施できた。2004年5月、3歳7ヶ月、リハビリ室でのリハが母親同伴で可能となる。現在では、感情表現も多岐にわたり、容易に憤怒発作にまでは至らなくなってきた。<BR>【考察】<BR> 今回リハビリを進めるにあたっては、本人の不快に対する過敏な反応が、たちまち憤怒発作となり、対応が遅れると生命に関わる問題となってしまうことが最大の問題点であった。ケースにみられた憤怒発作による呼吸状態の重篤化は、キアリ奇形による脳幹機能障害が要因である可能性が大きい。重症新生児室から出られなかった本人にとって、座位保持椅子、長下肢装具、リハビリ室での理学療法が、過敏さを強めることなく適切な時期に実施できたことで、興味を引き出し遊びの広がりにつながったと思われる。プログラム経過による精神運動発達の促進により、情緒面での過敏さの減少および脳幹機能障害の改善が得られ、それまでにみられた憤怒発作と呼吸状態悪化の悪循環を断ち切る一助になったのではないかと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), B0267-B0267, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564575360
  • NII論文ID
    130005012398
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.b0267.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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