痙性斜頚の表面筋電図波形解析による頚部筋の評価
説明
【目的】頸部筋の異常収縮により頭位の異常をきたす痙性斜頸は、現時点で治療法が確立していないのが現状である。特に運動療法としての治療効果の位置づけは期待できないとする意見も数多く聞かれる。そこで今回我々は、外科的治療後にジストニア症状の残存した1症例に対し、表面筋電計を用いて姿勢変化が頭位に及ぼす影響を定量化し、運動療法の治療手段について検討したので報告する。<BR>【対象】32歳男性、痙性斜頸、全身性ジストニア。2000年10月、頭部が左上方に向く症状出現。2001年選択的末梢神経遮断術(以下SPD)・淡蒼球電極埋め込み術(以下DBS)、2002年SPD施行するが、その後症状増悪し体幹装具を処方。2003年4月再度SPDを施行された。姿勢特徴として頸椎右側屈左回旋、右肩甲帯下制・骨盤挙上、体幹左凸の非対称性が観察された。<BR>【方法】測定肢位は座位とし、体幹修正なし時(条件a)、他動的体幹修正時(条件b)、体幹装具による修正時(条件c)の3つを条件とし、静的評価としてModified Tsui Score、動的評価として最大努力下で分速40回/分にて頸部左右側屈の繰り返し運動10回を課題とした。この際、胸鎖乳突筋(以下SCM)に対し、表面電極を2cmの間隔で両側筋の長軸方向に貼付、表筋電図をNeuropack(MEB-9104日本光電)にて計測した。波形の帯域幅は10Hzから500Hzとして、筋電図定量解析検査ソフトウエア(QP-205B日本光電)で筋電図の実効値(以下RMS)を求め、各条件下のSCM筋収縮時の左右差を比較した。<BR>【結果】静的評価の条件aでは、13点、条件bでは8点、条件cでは10点であり、条件aと比べ、b、cの順で改善が認められた。また、動的評価の条件aでは左SCMのRMS 102.8μV、右368.5μV、左右差比率3.58、条件bでは左SCMのRMS131.2μV、右339.0μV、左右差比率2.58で、条件cでは左SCMのRMSは118.1μV、右353.8μV、左右差比率3.00であった。静的評価と同様に条件aと比べ、b、cの順で左右差が低下した。<BR>【考察】これまで、運動療法の効果として写真による姿勢評価、自覚的改善度、Modified Tsui Scoreを用いてきたが、病態本質の異常筋収縮の客観的評価は困難であった。今回、我々が用いた筋電図計による波形解析評価は、痙性斜頸に対する運動療法手段の一つとして考える体幹アプローチによる頭位の変化を定量的にとらえることが可能であり、得られた結果では16‐28%の異常筋収縮の改善が認められた。今後の課題として異常筋の同定を目的とした、多チャンネル筋電図計を用いた定量的評価と、姿勢修正時の刺激に対する頭部の反応が、視覚系、体性感覚系、前庭系などいずれの要素が強く関与しているのか明確にしてゆく事が運動療法の確立として重要なことと考えられた。
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2003 (0), B0454-B0454, 2004
公益社団法人 日本理学療法士協会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205564698112
-
- NII論文ID
- 130004577909
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可