肩関節肢位が上腕二頭筋の伸張・弛緩に及ぼす影響
この論文をさがす
説明
【目的】<BR> 上腕二頭筋は肩、肘、前腕の運動に関わり、傷害を受けやすい筋であり、痙性による緊張亢進は肘関節運動を困難にする。そのため、肘関節の運動を評価・治療する場合、上腕二頭筋の伸張肢位や弛緩肢位を理解する必要がある。しかし、肩関節肢位が異なる場合に上腕二頭筋がどれほど伸張あるいは弛緩して機能を発揮するかに関する一致した見解は得られていない。本研究の目的は新鮮遺体肩を用い、一連の肩関節肢位で上腕二頭筋の伸張率を直接測定し、その伸張肢位や弛緩肢位を明らかにすることである。<BR>【方法】<BR> 実験標本には新鮮凍結遺体から採取した12肩を用いた。胸郭から離断した上肢帯標本の肩甲骨をジグに固定し、一連の肩関節肢位で上腕二頭筋の長頭と短頭の伸張率を測定した。実験は肘関節を伸展・回内位に固定した状態で、肩関節を他動的に動かして行った。肩関節の計測肢位は上肢下垂位での外旋・内旋位、肩甲骨面挙上(以下挙上)90°位での回旋中間・内旋・外旋位、水平外転位および伸展位の7肢位とした。各筋の伸張率は線維方向に沿い筋の中央部に設置したLEVEX社製パルスコーダーを用いて筋線維の伸張距離を直接測定した。測定値は基本肢位(肩挙上0°回旋中間位、肘屈曲90°中間位)からの伸張率で表した。統計処理はDunnett法による多重比較検定を用いた(p<0.05)。<BR>【結果】<BR> 上腕二頭筋短頭では伸展位(20.2%)、水平外転位(16.9%)が基本肢位より有意に大きい伸張率を示した(p<0.05)。それ以外の肢位では有意ではないがすべて正の伸張率を示した。上腕二頭筋長頭では伸張率が基本肢位より有意に大きい肢位は存在しなかったが、1)伸展位(7.8%)、2)挙上0°外旋位(3.9%)、3)水平外転位(3.5%)、4)挙上0°内旋位(1.5%)の順で正の伸張率を示した。また、挙上90°ではどの肢位も負の伸張率を示した。<BR>【考察】<BR> 従来、上腕二頭筋の伸張肢位として伸展位と水平外転位が提唱されてきた。今回の結果から、肩関節伸展位は上腕二頭筋の長頭・短頭のどちらも大きく伸張させており、水平外転より上腕二頭筋の伸張に有効であった。また、肩甲骨面挙上90°では肢位にかかわらず大きな伸張率は得られず、特に長頭では肘関節が伸展・前腕が回内されていても筋は弛緩していた。このことは肘関節伸展の可動域測定及び肘関節周囲の緻密結合組織を伸張する際には上肢下垂位より、上腕二頭筋が弛緩した90°挙上位で行うことが有効であることを示唆している。今回は限られた肩関節肢位での測定のため、今後はそれ以外の肢位での測定と筋電図を用いた動的な評価を行う必要がある。<BR>【まとめ】<BR> 肩関節伸転位で上腕二頭筋は短頭、長頭ともに伸張され、肩甲骨面挙上90°では短頭は大きく伸張されず、長頭は弛緩することが示された。<BR>
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2005 (0), C0268-C0268, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205564724096
-
- NII論文ID
- 110004994629
- 130004579197
-
- NII書誌ID
- AN10146032
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可