ジャンパー膝症例におけるスパイクジャンプの踏切動作解析

  • 長見 豊
    小山整形外科内科リハビリテーション科
  • 工藤 裕仁
    小山整形外科内科リハビリテーション科

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説明

【はじめに】<BR> バレーボールによるスポーツ傷害の一つであるジャンパー膝の中で、踏切時の制動動作で軸足(右打ちの場合は右脚)に症状が出現する症例を経験するが、一連の動作の中でメカニカルストレスが増大するメカニズムには不明な点が多い。そこで我々は、スパイクジャンプの踏切動作で疼痛が出現する症例に着目し、踏切が開始される初期接地から矢状面における制動動作の特徴を明らかにすることを目的として下肢の力学的対応について検討した。<BR>【対象および方法】<BR> 対象はバレーボール経験者の男性9名とし、踏切時の制動動作で軸足に疼痛が出現するジャンパー膝群3名と整形外科疾患を有していないコントロール群6名に分類した。反射マーカを解剖学的ランドマークに貼付し、3次元動作解析システム(VICON MOTION SYSTEMS)と床反力計(KISTLER)を用いて計測した。計測動作は3歩助走によるスパイクジャンプとし、軸足接地から身体重心最大低下までを制動相に、身体重心最大低下から両足離地までを加速相に分け、制動相に着目し分析した。<BR> マーカ設置は臨床歩行分析研究会が推奨する10ポイントモードを採用し、7リンク剛体モデルを近似した。座標データおよび床反力データより関節角度、関節モーメント、パワー(仕事)、床反力上下・前後方向成分、足圧中心を算出した。床反力と関節モーメントは被験者の体重で除して正規化を行い、床反力はピーク値の体重比を、関節モーメントは制動相での軸足下肢の各関節のピーク値を用いて比較した。足圧中心と関節角度は非軸足接地時と身体重心最大低下時で比較し、足圧中心は矢状面での第5中足骨骨頭からの距離を移動量とした。パワーは制動相のマイナスパワー成分を積分し、股関節、膝関節、足関節の下肢3関節の総和に対する各関節の割合を力学的貢献度として算出した。<BR>【結果および考察】<BR> 床反力では、ジャンパー膝群は荷重を意味する上下方向成分は非軸足への荷重移動が小さく、制動を意味する前後方向成分も小さい。また軸足の足圧中心の移動はコントロール群では非軸足接地時には前足部へ移動していたのに対し、ジャンパー膝群では非軸足接地後に前足部への移動が出現していた。膝関節モーメントでは大きな差は認めないが、パワーではジャンパー膝群の遠心性収縮を示すパワーの割合は軸足股関節では減少し、軸足膝関節では増加した。また関節角度ではジャンパー膝群はコントロール群に比べ、身体重心最大低下時の体幹と股関節の屈曲角度が減少しており、軸足股関節のパワーの割合を減少させたと考えられる。<BR> 以上のことから、ジャンパー膝群では非軸足への不十分な荷重移動が非軸足の制動力の低下を招き、軸足膝関節に依存した制動動作になった結果、膝関節のメカニカルストレスが増加する可能性があると考えられた。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0294-C0294, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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