歩行時における体幹筋の筋活動

書誌事項

タイトル別名
  • 若年層と壮年層の比較

説明

【はじめに】Ngらの解剖学的研究成果に基づいて筋電図測定することで個々の体幹筋の歩行時における筋活動パターンを把握することが可能となった。今回、我々は若年層および壮年層を対象として歩行時における体幹筋の筋活動を測定し、加齢が体幹筋の筋活動パターンに与える影響について検討したので報告する。【方法】対象は若年健常者5名(男性3名、女性2名、平均年齢26±3.1歳)、壮年健常者5名(男性2名、女性3名、平均年齢56±3.8歳)とした。筋電計はマイオシステム(NORAXON社製)を用いた。測定筋は腹直筋、外腹斜筋(単独)、内腹斜筋(単独)、内外腹斜筋重層部位、多裂筋、最長筋、腸肋筋とした。筋電図波形の解析はマイオリサーチを用いた。なお、周波数帯域は10から500Hzとした。歩行は自由歩行とし、一歩行周期を100%とし時間で正規化した。歩行周期を立脚初期(HC後10%)、立脚中期(立脚期中間10%)、立脚終期(TO前10%)、遊脚期(遊脚期中間10%)に区別した。一歩行周期における各筋の平均振幅値を100%とし、各区間に占める平均振幅値を求めた。【結果】若年健常者:腹直筋の平均振幅値は立脚期初期と終期において立脚期中期と遊脚期と比較して有意に増大した(p<0.01)。内腹斜筋は立脚期初期と中期において立脚期終期、遊脚期と比較して有意に増大した(p<0.01)。また、立脚期中期においては初期と比較しても有意に増大していた(p<0.05)。内外腹斜筋重層部位は遊脚期において有意に増大した。多裂筋、最長筋、腸肋筋は立脚期初期と終期において立脚中期、遊脚期と比較して有意に増加した(p<0.01)。壮年健常者:腹直筋は若年健常者と同様であった。内腹斜筋の平均振幅値は立脚期初期と中期において遊脚期と比較して有意に増大した(p<0.05)。しかし、立脚期中期は初期と比較しても有意差は認められなかった。内外腹斜筋重層部位の平均振幅値は若年健常者で増大していた遊脚期において有意差は認められなかった。多裂筋、最長筋、腸肋筋の平均振幅値は立脚期初期と終期において立脚中期、遊脚期と比較して有意に増大した(p<0.01)。【考 察】全体を通して壮年層と若年層では腰背筋群において筋活動パターンは類似していたが、腹筋群においては個々の筋において若干の相違を認めた。内腹斜筋において壮年層と若年層では筋活動パターンがほぼ同様であった。しかし、若年層が立脚期中期において初期と比較しても有意差が認められたが壮年層においては認められなかった。また内外腹斜筋重層部位の筋活動パターンは若年層において遊脚期(中期)で有意に増大していたが、壮年層ではその時期の筋活動増加は少なく、遊脚期終期への遅延が観察された。歩行時の体幹筋筋活動パターン、特に腹筋群においては加齢に伴い質的に機能低下を生じる可能性があることが示唆された。また腰背筋群及び腹直筋においては壮年層でも健常であれば若年者と相違がないことを確認した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2002 (0), 33-33, 2003

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564803200
  • NII論文ID
    130004576976
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.33.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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