呼吸管理が必要になったCrow-Fukase症候群の理学療法経験

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抄録

【はじめに】この疾患は欧米ではPOEMS症候群とよばれ、多彩な臨床症状を呈する。今回、Crow-Fukase症候群の増悪により人工呼吸器管理を必要となった症例をweaning時期から担当した。その理学療法経験に考察を加えて報告する。【症例】54歳、男性。平成13年5月、職場検診で胸水等の異常を指摘され、8月当院受診し、Crow-Fukase症候群と診断された。平成14年2月に全身怠惰、食欲不振にて入院となった。入院後神経症状の増悪および右胸水の増加を認め、6月29日より呼吸状態が悪化し、人工呼吸器管理となった。ステロイドパルス療法施行後、症状軽減認められ、weaningとADL拡大目的に7月29日、理学療法開始となった。【理学療法初期評価】意識レベルクリアで筆談可能。人工呼吸器の設定はSIMV6回、PS2cmH2O、PEEP4cmH2O、FiO2 0.4で呼吸回数は20から25bpm、1回換気量は250から320ml、HR120bpm、SaO2は98から100%であった。両下肢には浮腫、四肢遠位部に筋萎縮と筋力低下、体幹筋にも筋力低下を認めた。特に右下肢には明らかな腓骨神経麻痺を確認した。感覚は下肢遠位にしびれを伴う異常感覚を訴えていた。【理学療法経過】初期の理学療法目標を気道クリアランス、呼吸筋筋力強化、早期座位の獲得とし、日中の体位交換、呼吸介助、呼吸筋筋力強化を行なった。加えて、SaO2と疲労を指標にBed upと四肢体幹の筋力強化を実施した。8月7日よりweaning開始しT-tubeとなり座位練習も加えた。26日、鼻カニューレとなり立位練習開始した。9月10日よりO2 free、車椅子座位30分可能となり出療で歩行練習を開始したが、腓骨神経麻痺は回復を示さなかったためプロフッターを使用した。19日にはT-caneで30m歩行が可能となり、27日、自転車エルゴメーターを開始した。10月16日、院内歩行自立レベルで転院となった。【考察】今回担当したCrow-Fukase症候群における理学療法の問題は肺水腫による呼吸管理と四肢遠位筋の筋萎縮と筋力低下、感覚障害にあると思われた。これらの原因はCrow-Fukase症候群の特徴である血管透過性に起因する。血管透過性の亢進により肺水腫が増悪し、神経内浮腫によりPolyneuropathyが発症すると考えられている。肺水腫には頻回な体位交換が有効であり呼吸介助で容易に排痰が行なえた。Polyneuropathyは、原疾患の回復により若干の回復は認められたが、四肢遠位の筋力低下は残存し、装具の必要性やADL指導は必要不可欠と思われた。持久力向上を目的とした練習では、発汗過多も本疾患の特徴であるため、注意が必要と思われた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564816768
  • NII論文ID
    130004577004
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.355.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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