歩行での自宅復帰が可能となった長期臥床患者

説明

【はじめに】療養型病床群においては寝たきりの長期臥床患者が多く介護保険法の要介護度も4、5の重症患者が在院し家庭復帰はなかなか困難である。今回このような療養型病床群での理学療法において歩行での自宅復帰が可能となった症例を経験したので報告する。<BR>【症例経過】79歳女性 20年前より足の冷えや痛み歩行困難を感じB医大病院を受診脊柱管狭窄症と診断され4回手術を受けた。平成8年B医大病院に通院途中家族の車にて交通事故にあいD病院に入院し頭部打撲肋骨骨折と診断され1ヶ月間入院し退院、寝たきりとなり近医の往診を受けていた。平成14年自宅療養中意識混迷発語困難摂食不能になりE病院に入院し脳梗塞と診断され意識障害による摂食困難で胃婁造設し寝たきりの看護を受けた。平成15年6月当院入院となる。入院時胃婁、四肢屈曲拘縮、四肢麻痺、会話可能、おむつ使用ADL全介助、一般検査異常なし、糖尿病なし、長谷川式簡易知能検査正常であった。直ちに理学療法開始し上下肢他動運動、ギャジベッド座位、車椅子乗車などを行った。7月上下肢自動運動や起立練習を行った。8月車椅子にてグループリハビリに参加できる様になりマット上での基本動作も行った。9月股関節膝関節屈曲尖足位であったが平行棒歩行開始した。10月車輪付き歩行器による歩行開始。11月ポータブルトイレ開始。12月車椅子で病棟のトイレ使用練習。平成16年1月おむつがはずれ介助にて病棟トイレ使用になる。2月ピックアップ歩行器開始。4月見守りにてピックアップ歩行器歩行病棟でも可能。5月外泊を実施。6月ロフストランドクラッチとT杖による歩行開始。7月いまだ右下肢尖足があり踵が浮いてしまうため補高靴を採型。8月補高靴完成積極的な杖歩行を行う。9月応用歩行ADL動作を行う。10月杖歩行にて自宅復帰となる。<BR>【考察】本症例は、脊柱管狭窄症、交通外傷、脳梗塞による機能障害により数年間寝たきりであった。当院入院時四肢屈曲拘縮、四肢麻痺であったが関節可動域が改善し廃用性萎縮による筋力が回復してくるに従い麻痺は軽度の右片麻痺であることがわかってきた、しかし長年の寝たきり生活による廃用性の筋萎縮は著しかった。理学療法施行時の痛みも激しく理学療法施行前と就寝時に鎮痛剤を使用した。拘縮も右下肢については股膝関節の軽度屈曲拘縮と尖足は残存した。脳梗塞後遺症による嚥下障害も順調に回復したが急激な口腔摂取により顎関節炎による痛みが発生した。平衡感覚の障害は基本動作などで順調に回復した。今回本症例が理学療法開始から退院まで16ヶ月を要したが順調に回復したのは、知的障害が軽度であり糖尿病もないことが回復につながったのではないかと考えられた。<BR>【まとめ】今回療養型病床群における理学療法を経験して、重度の機能障害を持っている患者でも知的状態や合併症の有無など注意深い評価と集中的な理学療法が必要と思われた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), E0097-E0097, 2005

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564925440
  • NII論文ID
    130005012944
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.e0097.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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