メンタルプラクティスが姿勢制御に与える影響

DOI
  • Ohata Koji
    School of Health Sciences Faculty of Medicine, Kyoto University
  • Ichihashi Noriaki
    School of Health Sciences Faculty of Medicine, Kyoto University

Abstract

【目的】運動イメージを利用して、運動スキルを学習させるトレーニング方法をメンタルプラクティス(Mental Practice以下MP)という。Jackson らはMPが身体的な負荷を増やさずに、脳レベルで運動の反復を頻回に行えるという特徴を持つとしている。しかしMPが姿勢制御の学習に与える影響についての報告は無い。本研究の目的は、姿勢制御にMPが与える影響を明確にすることである。<BR>【方法】被験者は健常男性11名とし、研究の参加について事前に文書による同意を得て行った。被験者に椅座位をとらせ、上肢を下垂させて2kgの重錘を把持させた。合図に従い肩関節屈曲90度まで上肢をできるだけ速く挙上させ、その間の表面筋電図を双極導出で測定した。同様の動作を3分間の間隔をとって4回行わせた。2回目と3回目の間にMPを行い、1回目と2回目、3回目と4回目の間は、運動を想起させないように本を音読させた。MPはできるだけ速く上肢を挙上している場面を想起させることとし、1回につき5秒間の想起を10回繰り返して行わせた。筋電図の被験筋は三角筋前部線維(AD)、僧帽筋上部線維(UT)、腹直筋(RAB)、外腹斜筋(ABO)、多裂筋(MU)、最長筋(LO)とした。同時にアニマ社製傾斜測定装置MA200により肩関節の屈曲角度を計測し、合図開始から肩関節の運動が静止する運動終了時までの間の積分筋電図値を求めた。それぞれの積分筋電図値を1秒間の最大等尺性収縮を100%として正規化を行い、%IEMGとした。各筋の%IEMGの変化をFriedman検定、また運動課題遂行にかかる反復測定分散分析で比較した。<BR>【結果と考察】開始合図から運動終了までにかかる時間は1回目が889±102msec、2回目が884±125 msec、3回目が798±77msec、4回目が887±119 msecとなりMPによる有意な減少が認められた(p<0.05)。運動開始の合図から運動終了までの間の%IEMGでは、AD、ABO、MU、LOに有意な変化が生じ(AD、ABO、MU: p<0.05、LO: p<0.01)、3回目で最も低い値を示した。特にMU、LOについては2回目と3回目の間に有意な減少が認められた(MU: p<0.01、LO: p<0.05)。MPを行った3回目では運動の遂行に要する時間が短縮し、同一課題に必要な主働筋及び姿勢筋群の減少が認められた。本研究によりMPは運動時間の短縮だけでなく、姿勢制御の効率性に影響することが示唆された。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564971776
  • NII Article ID
    130004577605
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0055.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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