肩鎖関節脱臼保存例における肩甲骨の動態分析
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説明
【目的】肩関節運動に伴う円滑な肩甲骨運動は、肩鎖関節がその支点として機能している。今回、ROM、筋力とも完全に回復したRockwood分類3型症例の肩甲骨動態分析を試みる機会を得たので報告する。尚、患者本人より本学会発表における同意を得た。<BR>【対象と方法】左肩鎖関節脱臼(Rockwood分類TypeIII)の65歳の男性で、保存療法にてROM,筋力とも回復し、原職に復帰した症例を対象とした。<BR>測定肢位は端座位とし、肩関節前方挙上、肩甲骨面挙上、外転運動における肩関節下垂位、40°、90°、140°の各肢位で後方より写真撮影した。ランドマークは棘三角、肩峰角、肩甲骨下角の3点とした。肩関節下垂位で3点を通る三角形から求められる重心点の位置を座標の原点とし、x軸を水平線、y軸を脊柱と平行な線とした。各測定角度における重心点を求め、移動距離を計測した。肩甲骨下垂位における肩峰角と下角の2点間距離を基準値100とし補正した。x軸方向を側方移動、y軸方向を上下移動、棘三角と下角を結ぶ線と脊柱とのなす角度で回旋角度を測定した。<BR>【結果】1)肩関節屈曲;40°,90°,140°の各肢位の重心点は健側(1.7,0),(5.2,5.2),(-3.4,3.4)、患側(8.6,0),(3.4,8.6),(3.4,10.3)であり、回旋角度は健側11°,22°,37°、患側8°,18°,41°であった。2)肩甲骨面挙上;同様に重心点は健側(-3.4,3.4),(1.7,6.9),(-1.7,3.4)、患側(8.6,0),(3.4,8.6),(5.2,8.6)であり、回旋角度は健側7°,26°,39°、患側3°,20°,34°であった。3)肩関節外転;同様に重心点は健側(-1.7,1.7),(-6.9,5.2),(3.4,0)、患側(-1.7,3.4),(-6.9,3.4),(8.6,5.2)であり、回旋角度は健側4°,30°,40°、患側-5°,16°,43°であった。挙上路に関係なく肩甲骨は明らかに外方変位しており、挙上90°までの範囲では上方回旋角が減少していた。<BR>【考察】健側肩甲骨の位置変化は、先行研究と同様に上下・側方移動は少なく、回旋が主体で重心点の移動が少ない結果となった。一方、患側については挙上路に関係なく健側と比較して重心点の軌跡が外側を通っており、肩甲骨の過剰な外方移動を認め、肩峰の前方不安定性の存在が示唆された。また、肩甲骨の回旋については、運動の初期から中期にかけて患側の上方回旋角度が低値を示した。これらの原因として、三角筋による牽引力に対する肩甲骨の保持機能の障害と共に、肩鎖靭帯の断裂に伴う、feedback機構の破綻も関与していることが推察された。これは肩甲骨の上方回旋角度の減少についても同様であり、運動後期に改善されるのは90°を頂点として、その後は運動軸に上肢の重心位置が近づくことで重力による関節トルクが低下し、三角筋の活動が減少していくためと考えられる。理学療法として僧帽筋の筋活動については着目していく必要があると思われる。<BR><BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), C0260-C0260, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205564990208
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- NII論文ID
- 110004994621
- 130004579189
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可