末梢神経再生に対する磁気刺激の影響

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抄録

【はじめに】磁気刺激が末梢神経の再生に及ぼす影響については未だ一定の見解が得られていないが,我々がこれまでに行った観察では,電気刺激や磁気刺激が再生末梢神経の成長円錐を選択的に傷害し,神経再生の再生率や成熟にも影響を与えることが明らかになった。しかし,再生を促進させる適切な刺激法強度は未だ不明である。本実験では挫滅損傷を与えたマウス坐骨神経に磁気刺激を長期間断続的あるいは単発で与え,再生神経を光学顕微鏡で観察して両者を比較した。<BR>【材料と方法】9-11週齢のddY系雄マウス14匹をネンブタールの腹腔内投与で麻酔し,坐骨神経を露出して大腿中央の高さで挫滅損傷を与えた後,経皮的に坐骨神経損傷部に,5秒に1回の割合で5分間,マグスティム200(ミユキ技研)を用いて,長期断続群には挫滅後3日目より刺激強度20%で毎日1回ずつ固定前日まで,単発群には挫滅後2日目に1回,刺激強度20%あるいは60%で磁気刺激を与えた。なお,挫滅後磁気刺激を与えなかった群を対照群とした。刺激後7日と28日後に,マウスを2.5%のグルタルアルデヒドと4%パラホルムアルデヒドの混液で灌流固定し,1%四酸化オスミウムで後固定した後,型のごとくエポキシ系樹脂に包埋した。挫滅損傷部の遠位端より5mmの地点で,厚さ約1μmの坐骨神経横断切片を作製し,トルイジンブルーで染色した。神経線維が一様に分布している光顕視野を数カ所ずつ無作為に抽出して,再生有髄線維の数と直径を調べた。<BR>【結果】刺激後7日では変性した髄鞘と,その間に伸長してきた細い再生神経が観察された。比較的太い再生軸索はそれぞれにシュワン細胞の細胞質で囲まれており,この頃から再髄鞘化が始まっていることを示している。各実験群の軸索数を比較すると,20%の刺激を与えた長期断続群では1視野あたりに99.7本の再生軸索が含まれており,対照群の62.9本よりも多かった。また,60%刺激の単発群では70.6本と対照群とほぼ同じであった。刺激後28日では,変性した髄鞘はごくわずかとなり,再髄鞘化された再生神経の数はさらに増加していたが,20%の長期断続群では,再生軸索数が対照群よりも少なかった。しかし,60%あるいは20%単発群の再生軸索数は対照群とほぼ同じであった。一方,軸索直径の比較では,20%単発群で最も太く,厚い髄鞘も形成されており,再生神経の成熟も進んでいることが示唆された。<BR>【考察】これらの結果は,磁気刺激の強度や方法が神経の再生率や伸長に重大な影響を及ぼす可能性を示唆している。また,20%単発群で,再生神経の成熟が最も進行していたことから,適切な刺激強度と方法によって神経の機能回復が促進される可能性も示唆している。しかし現在のところ,そのメカニズムは不明である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), A0075-A0075, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205564996224
  • NII論文ID
    130004577614
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0075.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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