痴呆性高齢者の移動能力評価尺度に関する研究

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  • Southampton Mobility Assessment日本語版の作成

抄録

【背景】 英国の理学療法士Pomeroyは、痴呆性高齢者の移動能力を適切に評価するには「1.複雑な準備が不用で公正である」、「2.病棟や病室で容易に使用できる」、「3.動作困難な事柄の範囲を示せる」、「4.治療における目標設定が適切に行える」、「5.再評価時における小さな変化を明確に示せる」といった条件を満たしている評価尺度が必要であると考えた。そこで同氏は、Southampton Mobility Assessment (以下SMA)を開発することによって痴呆性高齢者の移動能力を簡便に点数化することを可能なものとし(Physiotherapy 8:446-448,1990)、その後の痴呆性高齢者のに関する数々の研究において役立てている。そして今回、我々はSMAの日本語版を作成し、その信頼性と妥当性について分析を行った。<BR>【対象】 介護老人保健施設に入所中の痴呆性高齢者85名(男性6名、女性79名)で、平均年齢は88.8±5.3歳(71-96歳)。HDS-Rの平均点は9.3±7.4点(0-9点;48名、10-19点;25名、20-28点;12名)。<BR>【方法】 SMAの開発者であるPomeroyの許可を得、逆翻訳を行い、SMAの日本語版(SMA-J)を作成した。研究手順としては、第1回目の移動能力評価として、評価者1(RPT)と評価者2(RPT)がSMA-Jを用いて対象者の移動能力を評価し、同日に評価者3(RPT)がBarthel index(以下BI)の移動能力評価に関する下位項目(45点満点)を用いて移動能力を評価した。第2回目の移動能力評価として、1週間後、評価者1がSMA-Jを用いて、対象者の移動能力を再評価した。<BR>【解析】 信頼性の分析には、級内相関係数(ICC)を用いた。評価者間信頼性については、評価者1と評価者2によるSMA-J の成績を比較し、成績の一致性について分析した。評価者内信頼性については、評価者1によって2回行われたSMA-J の成績を比較し、成績の一致性について分析した。妥当性の検討として、Spearmanの順位相関係数を用いて、SMA-J の得点とBIの移動動作関連項目の得点との関連を分析した。すべての分析におけるp値は両側であり、p<0.01を有意とした。統計処理にはSPSS(ver.11.5)を用いた。<BR>【倫理面への配慮】 本研究は、実施施設の承認を得た後、文書にて家族から同意の得られた対象者のみに実施した。対象者の家族には、研究参加に同意しない場合でも不利益が生じないこと、解析結果を発表する場合、被験者の個人情報が明らかになることはないこと、検査の際に伴うストレスを感じる可能性があることなどについて、十分に説明を行い、十分な配慮のもとに実施した。<BR>【結果・考察】 本研究では、SMA-Jにおける評価者間信頼性(ICC=.996)および評価者内信頼性(ICC=.999)とも高い結果となった。また今回、対象者におけるSMA-Jの得点は、国際的に信頼性と妥当性が認められているBIの移動能力に関する下位項目の得点とも有意な相関(r=.801)を示した。よって、SMA-Jは、痴呆性高齢者における移動能力の有効な評価尺度になりうると考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), E0065-E0065, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565041664
  • NII論文ID
    130004578406
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.e0065.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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