加齢による動的バランス能力の変化について
説明
【はじめに】新潟県長岡市では健康づくり事業の一環として2002年度から高齢者健脚度測定調査事業を開催し,住民の下肢機能評価や日常生活動作能力およびQOL等の評価を行っている.そこで今回,我々は年齢と動的バランスおよび10m歩行速度との関係を検討したので報告する.【対象】対象は長岡市主催の健康づくり事業の参加者(60歳代から80歳代)のうち動的バランスと10m歩行速度の2種目を測定することが可能であった543(男性160,女性383)名である.【方法】健康づくり事業の実施期間は2002年6月から10月の5ヶ月間であった.動的バランスはSTABILITY SYSTEM(Biodex Medical Systems, Inc)を用いて測定した.STABILITY SYSTEMは安定性レベルを1から8まで設定することができ,8が最も安定している状態を示す.測定時間は20秒であり,測定時間内にプラットホームが水平方向から傾いた角度と時間から全方向安定性指数(Stability Index:SI)が算出される(SIが小さいほどバランス良好).今回の解析ではレベル8で得られた結果を動的バランス能力として使用した.対象者の年齢を男女別に60歳代,70歳代,80歳代に分類し,動的バランスと10m歩行速度を各年代間で比較検討した.また,動的バランス能力と10m歩行速度との関係も併せて検討した.統計処理は分散分析を用いて検定し,事後検定にはFisherのPLSDを用い,有意水準を5%とした.【結果】SIを年代別にみると男性では60歳代2.2±0.81(平均値±標準偏差(SD)),70歳代2.9±1.1,80歳代3.3±1.2,女性では60歳代2.3±0.9,70歳代 2.8±1.0,80歳代 3.0±1.1であり,男女ともに60歳代では70歳代および80歳代より有意に低い値を示した(p<0.05).歩行速度を年代別にみると男性では60歳代 4.8±0.8秒,70歳代5.5±1.2秒,80歳代6.4±1.2秒,女性では60歳代5.4±1.1秒,70歳代 6.2±2.1秒,80歳代 7.8±2.2秒で,男女ともに各年代間で有意な差を認めた(p<0.05).SIが平均値-1/2SDより小さい群(安定群)と平均値-1/2SDから平均値+1/2SDの群(平均群)および平均値+1/2SDより大きい群(不安定群)の10m歩行速度をみると,男性では安定群4.9±0.9秒,平均群5.4±1.1秒,不安定群5.7±1.4秒であり,不安定群は平均群および安定群より有意に歩行速度が遅かった(p<0.05).また,女性では安定群5.7±1.2秒,平均群6.2±1.6秒,不安定群7.0±3.1秒であり,各群間で有意な差を認めた(p<0.05).【考察】SIは動的バランス能力の指標として確立されたものではなく,他の検査結果と併用してSIの妥当性を検討する必要がある.今回の調査では最も不安定性レベルの少ない状態で測定したSIと歩行能力との関連をみたが,SIの値が平均値+1/2SDより大きい群では歩行速度が有意に遅い結果を示した.このことからSIが動的バランスの一面を反映しているものと考えられる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 854-854, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205565072640
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- NII論文ID
- 130004577558
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可