身体重心と骨盤の位置変化が体幹のアラインメントに及ぼす影響

説明

【はじめに】 複雑な身体動作において、身体重心と骨盤の位置変化は身体の各関節のアラインメントやモーメントなどに大きく影響を与えている。我々は過去の研究で身体重心と骨盤の位置変化が下肢のアラインメントや筋活動等に影響を与えることを報告してきた。今回は矢状面での体幹のアラインメント変化に着目し実験した結果、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】 対象は健常男性10名、年齢は28.2±4.7歳(23-36歳)、身長は172.9±8.5cm(162-189cm)、体重は平均65.8±10.6kg(56-80kg)であった。 被験者に足底圧測定器F-SCANの圧力センサーシート上に肩幅で立位をとらせ、この肢位を自然肢位とした。この自然肢位を基準とし、骨盤前方移動肢位、骨盤後方移動肢位、足圧中心前方移動肢位、足圧中心後方移動肢位の4肢位を施行させた。各肢位の体幹の側面像をX線にて撮影し、体幹アラインメントの変化を調査した。 骨盤前方移動肢位及び骨盤後方移動肢位は、前方にある足圧分布と足圧中心が映し出されたモニターを注視しながら、自然肢位の時の足圧中心を動かさないようにし、骨盤のみを前方および後方に移動させた。 足圧中心前方移動肢位及び足圧中心後方移動肢位は、骨盤の動きをできるだけ伴わないように被験者に指示し、足圧中心のみを前方および後方に移動させた。なお、各々の課題は被験者に十分な説明と練習を行った後に施行した。 各課題における測定項目は仙骨傾斜角、腰椎前彎角である。仙骨傾斜角は値が大きいほど骨盤が前傾し、小さいほど骨盤が後傾していることを示す。得られらデータは自然肢位とその他の肢位間で対応のある平均値の差の検定を行い、比較検討した。【結果および考察】 仙骨傾斜角は骨盤前方移動肢位と足圧中心後方移動肢位で有意に小さくなり、骨盤後方移動肢位と足圧中心前方移動肢位で有意に大きくなった。すなわち、下肢が同じ方向に傾斜する動作でも骨盤のみを移動した肢位と足圧中心のみを移動した肢位では骨盤の前後傾は異なる肢位をとることが分かった。 腰椎前彎角は骨盤前方移動肢位と足圧中心前方移動肢位で有意に大きくなり、骨盤後方移動肢位と足圧中心後方移動肢位で有意に小さくなった。すなわち、骨盤の前後傾に関わらず、骨盤と足圧中心の位置に依存して腰椎前彎が変化することが分かった。 一般に骨盤の前傾と腰椎前彎は関連した肢位として捉えられている。しかし、今回の結果から骨盤の前後傾に関わらず腰椎の彎曲は多様な肢位をとることが示唆された。臨床的にも体幹のアラインメントは、多様な対応をしている。今後、下肢各関節との関連も含め、今回の結果を臨床的な応用に生かしていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2002 (0), 92-92, 2003

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565097344
  • NII論文ID
    130004577577
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.92.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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