スリングエクササイズセラピーの心臓リハビリテーションへの試み

DOI
  • 徳田 雅直
    熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 村山 伸樹
    熊本大学大学院自然科学研究科
  • 中島 雅美
    熊本大学大学院自然科学研究科 西日本リハビリテーション学院
  • 河崎 靖範
    熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
  • 松山 公三郎
    熊本リハビリテーション病院 循環器科

抄録

【背景および目的】心臓リハビリテーション(以下;心リハ)における回復期運動療法では従来の有酸素運動に加え、筋力強化運動はレジスタンストレーニング(以下;RT)として認知されている。一般的にRTは徒手抵抗や重錘バンドなどが頻繁に使用される例が多い。今回、リラクセーションの獲得・バランス機能改善・筋力増強など万能な運動ツールのスリングエクササイズセラピー(以下;SET)を使用して心リハを試みた。本邦においてSETを循環器領域に応用した例はなく、心リハを施行した場合の効果について検討する。<BR>【対象および方法】今回2症例を提示する。症例1、85歳男性、診断:心不全。症例2、78歳男性、診断:心筋梗塞(ICD植え込み後)。方法は3種類行った。1.臥位にて足部にSlingを着用し下肢屈伸抵抗運動を行う。2.座位にて上下肢にSlingを着用し屈伸運動に伴う等張性運動を行う。3.立位にて上肢にSlingを着用し屈伸抵抗運動を行う。SETによる運動処方として、強度はBorg指数11から13、回数は( 1セット20回 )× 3セット/ 日、時間は約30分間施行、期間は3週間、種類は段階的に臥位→座位→立位へ促す。評価項目は血圧、心拍数、二重積、SpO2、肺活量、6MWD、重心動揺検査、血中BNP濃度、BMI、Barthel Index(以下;BI)、EF、FS とし、心リハ開始時及び終了時に以上の項目を評価し比較検討した。<BR>【結果】2症例共に二重積,SpO2、肺活量の改善が得られた。6MWDでは症例1は訓練前4分30秒(中止)140m、訓練後6分間完歩240mと改善した。症例2は訓練前2分12秒(中止)40m、訓練後5分20秒(中止)150mと改善した。重心動揺総軌跡長では2症例共に訓練後に中心部へ重心が集約しバランス機能の改善が認められた。血中BNP濃度、BMI、EF、FSは共に改善した。症例1のBIは訓練前55点から訓練後90点と改善し、症例2のBIは訓練前50点から訓練後90点と改善した。<BR>【考察】有酸素運動が困難な症例は高齢・心不全・筋力低下・バランス機能低下など多彩な因子が考えられる。自転車エルゴメータやトレッドミル等の一般的な心リハを行う事が困難な症例は少なくない。そこでSETを使用し筋力強化を中心としたRTを施行した結果、運動耐容能の増加とバランス機能改善が得られた。運動による一回拍出量の増加と上下肢のトレーニングによる骨格筋代謝の改善により運動耐容能は増加したと考えられる。SETは負荷量の調節が可能でありRTも行え、またバランス機能も改善出来るという事で効率的なトレーニングが可能であるという事が挙げられる。この事が運動耐容能の低い症例や一般的な心リハが行えない症例においては持久力・運動協調性の向上に反映したと考えられる。<BR>【まとめ】SETは高齢の心機能低下例においても安全に運動療法を施行でき、心リハの一手段として有用である可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), D0548-D0548, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565142528
  • NII論文ID
    130004578339
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.d0548.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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