外傷性脊髄損傷者におけるADL評価の妥当性の検討

  • 出田 良輔
    独立行政法人 労働者健康福祉機構 総合せき損センター リハビリテーション科
  • 佐々木 貴之
    独立行政法人 労働者健康福祉機構 総合せき損センター リハビリテーション科
  • 椎野 達
    独立行政法人 労働者健康福祉機構 総合せき損センター リハビリテーション科
  • 植田 尊善
    独立行政法人 労働者健康福祉機構 総合せき損センター リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • SCIM(Spinal Cord Independence Measure)とmFIM(FIM運動項目)を比較して

説明

【はじめに】SCIMは1997年Catzらが脊髄損傷用に考案したADL評価法(Version3;SCIM3)である.SCIM3はセルフケア,呼吸・括約筋管理,移乗,移動の4領域(配点0-100)からなり,脊髄損傷に重要な領域に高い配点がなされている.そこで,今回信頼性が確立しているFIMと比較することでSCIMのADL評価法としての妥当性を調査した.<BR>【方法】対象は2002年1月から2004年6月までに当院入院した外傷性脊髄損傷者の中で以下の条件,1)受傷後14日以内に当院へ搬送,2)退院時改良Frankel分類がA・B・C・D,3)退院まで経時的に観察,4)FIM認知項目に減点の無い,を満たした123名(男性108名,女性15名,平均年齢48.7±25.1歳)とした.方法はmFIMとSCIM3のADL得点を算出し,改良Frankel分類各群間の比較と損傷高位各間での比較の2種類において検討した(t検定:有意水準=5%未満).なお,損傷高位各間は改良Frankel分類Aの者に限定し頚髄損傷8群,胸腰髄損傷3群の計11群に分類し比較検討した.<BR>【結果】改良Frankel分類各群間の比較では,mFIM・SCIM3共にA・B・C各間で有意差は認められなかったが,C群とD2,D3各間で有意差が認められた(p<0.05)。損傷高位間の比較では,SCIM3ではほぼ各高位間に有意差が認められた(p<0.05)が,mFIMではC4・5とC6・7高位間のみに有意差が認められた(p<0.05).<BR>【考察】改良Frankel分類各群間の比較でA,B,C各間で有意差が認められなかった理由に,損傷高位が異なっていた事が要因に考えられた.改良Frankel分類Cでは上肢機能が比較的低いC3/4高位での損傷が60%を占めているのに対しA,Bでは15%であった事が,mFIMとSCIM3の得点を上げなかった原因と考えられた.損傷高位間の比較では,SCIM3はADL自立度を良好に得点へと反映出来ていると言えた.一方,mFIMでのC4・5とC6・7間のみの有意差は,肩周囲筋の重要性と自立困難な清拭・トイレ動作・排泄コントロールでの上腕三頭筋の関与が大きい事が示唆された.加え,mFIMはC4・5とC6・7間以外の損傷高位別ADL自立度を反映出来ていないことを示唆する.更に呼吸能力が重要となるC1/2・C3・C4各高位間においてSCIM3のみに有意差が認められた事は,mFIMには無い呼吸器管理項目によるところが大きいと考えられた.また,T2-T6・T7-T12群間で有意差がSCIM3のみ認められたこともmFIMに無い詳細な移乗・移動項目が大きいと考えられる.これによりSCIM3は高位頚髄損傷から胸腰髄損傷にまで対応出来ていることが示唆された.上記以外にもSCIM3は,使用法が簡便・記載基準に沿って評価可能なためManual不要という利点があった.以上より,外傷性脊髄損傷者におけるADL評価法としてSCIM3の方が簡便であり,妥当性に優れていると考えられた.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), B0230-B0230, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565151232
  • NII論文ID
    130004579099
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.b0230.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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