自転車エルゴメーターにおけるペダル回転数の差異が換気動態に与える影響について

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【はじめに】<BR>心疾患における運動負荷試験時、負荷量に対し50~60rpmが至適回転数といわれている。臨床においてはペダル回転数が至適回転数に比べ低回転や高回転であることがみられる。そこで今回は漸増運動負荷試験においてペダル回転数を低回転、中回転、高回転と設定し換気循環動態に与える影響について検討した。<BR><BR>【方法】<BR>対象は健常者10名(男性6名、女性4名、年齢24.8±3.9歳、身長165.5±6.5cm、体重61.6±12.1kg)を被験者としペダル回転数は40rpmを低回転、50~60rpmを中回転、80rpmを高回転と設定し、各測定を1日以上あけて行った。被験者はエルゴメーター上で2分の安静を保った後、10W負荷で自転車運動を3分間行い、その後15W/分のramp負荷試験にて、呼気ガス分析を行った。安静時および漸増運動負荷時の換気動態の測定は換気当量法にてAT値を決定し、AT値における酸素摂取量(V(dot)O 2)と仕事率(W)を算出した。循環動態の測定では心拍数(HR)、収縮期血圧、ダブルプロダクト(DP)を算出した。統計解析はWilcoxon符号順位検定を用いた。<BR><BR>【結果】<BR>中回転と高回転では、W、HR、DPにおいて高回転より中回転の方が高く有意差が認められ(P<0.05)、V(dot)O2、収縮期血圧において有意差は認められなかった。低回転と中回転では、V(dot)O2、W、HR、収縮期血圧、DPにおいて有意差は認められなかった。低回転と高回転では、Wにおいて高回転より低回転の方が高く有意差が認められ(P<0.02)、V(dot)O2、HR、収縮期血圧、DPにおいて有意差は認められなかった。<BR><BR>【考察】<BR>中回転と高回転では中回転のW、HR、DPが有意に高かった。高回転では筋収縮速度が増加しtypeII線維が動員され、酸素利用効率が低下することで早期に無気的代謝が加わった結果と考えられる。低回転と中回転では有意差は認められなかった。低回転の場合高出力が必要となりtypeII線維の参加が増加することが考えられるがV(dot)O2に有意差は認められなかったためこの影響はなかったと考える。また等尺性収縮様式に近い運動になるためにBPが上昇し心筋酸素消費量増大に繋がると考えられるが、BP、DPに有意差が認められず、今回の低回転では低負荷であったため等尺性収縮の影響がなかったと考える。<BR>よって回転数の差異で負荷試験やトレーニングを行う場合、低回転では酸素利用効率は高いが心筋への負荷は低いこと、中回転では心筋への負荷を十分にかけた有酸素運動を行えること、高回転では低負荷で無気的代謝が加わってくること等の影響が示唆された。今回の研究では健常人を対象に行ったが、心疾患を対象とした場合、循環動態への影響は大きいことが予測され、換気動態に加えて循環動態を考慮し、AT値における運動処方を検討していく必要があると考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565161856
  • NII Article ID
    130005012917
  • DOI
    10.14900/cjpt.2004.0.d1205.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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