機能的脊髄後根切断術を施行した痙直型四肢麻痺児の一症例

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抄録

【はじめに】痙直型四肢麻痺児は、屈筋および伸筋群に痙性が存在し、徐々に屈筋痙性が増強、これらの異常筋緊張により正常運動発達が阻害され、異常姿勢、軟部組織の短縮、関節拘縮・変形といった二次障害につながることが多い。当センターでは、過緊張を有する中枢性感覚運動障害児に対して平成14年3月より機能的脊髄後根切断術(Functional Posterior Rhizotomy,FPR)を開始し、この3年間に約50症例を経験してきた。今回、痙直型四肢麻痺児に対してFPRを施行し、術後経過とてんかん発作の変化について報告する。<BR><BR>【症例】12歳 男児。脳室周囲白質軟化症、てんかん、痙直型四肢麻痺。在胎29週、出生時体重1273g。生後9ヶ月時に未頚定で療育開始。生後11ヶ月時に点頭てんかんと診断され、服薬管理となる。6歳時に発熱に伴う痙攣重積で人工呼吸管理(3日間)を行い、9歳時にてんかん発作が再発、連続10分以内の発作が1-2ヶ月/回の頻度でみられるようになった。平成15年10月(10歳時)に当センターでFPRを施行し、術後2ヶ月間の集中理学療法施行後退院した。入院時のGMFCS は5レベル。安静時は低緊張、背臥位では下肢外転外旋位を呈するが、興奮時や運動開始時に全身の筋緊張が高まり、下肢伸展痙性が高まる。上肢はATNRの影響により左右非対称性肢位をとることが多くみられる。寝返りは側臥位まで全身屈曲パターンを使い、頚部過伸展と共に全身伸展パターンにより腹臥位になる。座位は胸部を前方に突出させ頚部伸展と四肢屈筋痙性を使って座位バランスを保持。移動は、上肢の過剰な引き込みと連合反応による下肢伸展でずり這いを行う。<BR><BR>【経過】術後2年までの経過で両股関節ともにMigration Percentage、Sharp角はおおむね変化はみられない。下肢腱反射は減弱、Clonusは消失し、筋緊張(Ashworth Scale)は、下肢を中心に筋緊張は低下し、下肢関節可動域は拡大維持されている。機能的自立度(Wee-FIM)、粗大運動能力尺度(Gross Motor Functional Measure,GMFM)は術前レベルでほぼ維持されている。てんかん発作は、継続時間が1分以下になり、頻度も平均2-3ヶ月/回と術前に比べ減少した。<BR><BR>【考察】FPRは、脳障害による相対的な末梢性興奮刺激過剰状態を、Ia線維を含む脊髄後根を切断し中枢性抑制とのバランスを取り戻すことで痙性を軽減する外科的治療である。今回の症例では、術後2年において運動機能は維持され、二次障害の進行はみられていない。てんかん発作の術後変化は、FPRによる過緊張状態の緩和と適切な服薬管理が、筋疲労の減少・全身的にリラックスできる時間の増加・昼夜リズムの安定などの効果が得られたためと考えられる。児は術後、積極的な授業参加が可能となり今後のQOL向上につながるものと考える。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), B0213-B0213, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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