痙縮に対する持続伸張と連続的他動運動の比較

Description

【はじめに】<BR>  我々は過去の学会において、痙縮に対する持続伸張(Prolonged Stretch;PS)と連続的他動運動(Continuous Passive Motion;CPM)の影響について報告してきた。<BR> 今回は足関節トルクと伸張反射を計測して、PSとCPMの効果を比較検討したので報告する。<BR>【対象】<BR> 対象は脳卒中片麻痺患者9名である。このうち、足関節トルクは全例、伸張反射は3名計測した。下腿三頭筋の筋緊張の程度はModified Ashworth Scaleにおいて、全例1以上であった。<BR>【方法】<BR> 治療(PSおよびCPM)の前後に評価(足関節トルクおよび伸張反射)を行った。計測肢位は評価、治療ともに安静背臥位、膝伸展位とした。<BR>○評価<BR>・足関節トルクの計測<BR> 麻痺側足関節を角速度40deg/secで、足関節底屈45°から各被験者の最大背屈角度まで、他動運動を5回実施した。この時のトルクを計測して、ピークトルク5回分の平均値を算出した。<BR>・伸張反射の計測<BR> 伸張反射は麻痺側ヒラメ筋より導出した。麻痺側足関節を角速度40deg/secで、10°背屈させる他動運動を200回実施し、200回分の筋電波形を整流し、加算平均した。筋電図の計測は日本光電製Neuropack MEB-2200を使用した。<BR>○治療<BR>・PS<BR> 各被検者毎の最大背屈位にて固定し、15分間の持続伸張を行った。<BR>・CPM<BR> 角速度10deg/secで底屈45°から最大背屈位まで、他動運動を15分間実施した。<BR>【結果】<BR>1.各治療後のピークトルクの変化<BR> 治療前のピークトルクの平均値を100%とし、治療後の割合を算出した。被検者全体の平均足関節トルクはPS後で79.7%、CPM後で83.6%であった。<BR>2.各治療後の伸張反射の変化<BR> 各治療後のヒラメ筋の伸張反射は治療前と比較して減弱していたが、CPM実施後のほうが著明に低下していた。<BR>【考察】<BR>  今回、足関節ピークトルクは各治療後ともに減少していた。関節の他動運動時の抵抗は反射性要素のほかに、非反射性要素も関与していることが知られている。非反射性要素とは筋・腱および筋膜・結合織の弾性組織と、筋フィラメント間における連結橋があり、前者の短縮と後者の増加により、他動運動時の抵抗が増大すると考えられている。PSおよびCPMの実施により、これら非反射性要素が改善したことにより、足関節ピークトルクが減少したと考えられる。また、CPMは、痙縮筋に対して単位時間当たりの伸張刺激が、PSより少ないにもかかわらず、伸張反射は減弱していた。PSの痙縮緩和のメカニズムは、過去の報告ではIb抑制の関与が提唱されている。CPMはPSとは異なり、拮抗筋である前脛骨筋も伸張していること、関節運動を伴う事で、関節内や筋内の固有受容器を刺激し、神経学的に何らかの影響を与えたのではないかと考えられた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565404416
  • NII Article ID
    130004577719
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.a0709.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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