当院における家屋調査の現状と今後の課題
説明
【はじめに】<BR> 入院中に将来の生活の場となる家屋の評価を実施し、療養環境を整備することが必要であり、この「リハビリテーション(以下、リハ)前置主義」の理念から当院リハ部においても積極的に家屋調査するよう意識化している。<BR>そこで今回、当院リハ部における家屋調査の現状について後方視的に調査したので若干の考察を加え報告する。<BR>【当院の家屋調査】<BR> 当院リハ部では、自宅退院すると予測される入院リハ患者に対し、環境を整える必要がある場合、業務時間内に自宅を訪問し、家屋改造の指導に加え、必要なサービスの紹介なども行っている。家屋調査時は、担当理学療法士、作業療法士ならびに状況により入院リハ患者と家族、介護支援専門員も同行している。<BR>【対象と方法】<BR> 平成11年4月から平成15年8月の間に、当院リハ部の家屋調査記録用紙を用いた記録が残っている当院リハ部で家屋調査を行った80件について、記録用紙より分析した。<BR>【結果】<BR>男女比は、男性40件、女性40件であった。平均年齢は70.7±16.6歳であった。疾患内訳は、脳血管障害が55.4%、骨関節疾患が33.9%、その他(パーキンソン病、多発性骨髄腫、肺炎など)が10.7%であった。<BR> 家屋調査件数は平成11年度が5件、12年度が4件、13年度が15件、14年度が35件で、15年度は8月までの5ヶ月間の件数は21件であった。この値を12ヵ月分に換算すると50.4件でした。<BR>年度別のPT1人当たりの調査件数を算出したところ、13年度1.0件/名だったのに対して14年度は1.7件/名と増加し、15年度も平均2件/名を超えるペースである。<BR>家屋調査を行った時期をみると、発症日もしくは入院日より31日以上45日以内に家屋調査を行っている場合が最も多いことが示された。<BR>家屋調査による改造・改修指導内容としては、浴室に関する指導内容が最も多く、次いでトイレ、寝室、玄関の上がり框の順となっていた。特に、シャワーチェアの設置や手摺りの設置、ベッド導入の指導が多かった。<BR>【考察】<BR>家屋調査件数増加の理由として、療法士の家屋調査に対する意識向上、療法士数増加による療法士1人当たりの患者1人に対する治療時間増加、「リハ総合実施計画書」の療法士による説明義務、リハ専用車の導入が挙げられる。家屋調査時期は、発症もしくは入院日から31日以上45日以内に行うことが最も多く、これは、医学的管理が済み、ある程度全身状態が落ち着いてから調査を行っているためと考える。<BR>今後の課題としては、早期家屋調査実施、退院後の再確認、さらに、指導内容の質の向上のために、スタッフの知識統一や他職種と連携を取ることが重要であると考える。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2003 (0), E0870-E0870, 2004
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205565414784
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- NII論文ID
- 130004578510
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可