脊髄損傷者における起立性低血圧に対する飲水の効果について
Description
【目的】<BR> 脊髄損傷者において合併症の予防は重要である.特に頸髄損傷者にとって起立性低血圧は受傷直後からよく見られる重篤な症状である.Tankらは四肢麻痺者の安静臥床において飲水により血圧が上昇した事を報告している.そこで今回、頸髄損傷者を対象にTilt Tableを用いて起立性低血圧に対する飲水の効果について検証した.<BR>【方法】<BR> 対象は脊髄損傷者男性3名(C4―C6、AIS:A)で、重篤な心・腎疾患の既往がなく水分摂取量に制約のない者である.膀胱充満による自律神経過反射などの影響を防ぐため膀胱瘻を造設している者、もしくはバルーンカテーテルを一時的に挿入可能な者を対象とした.方法はTilt Tableを使用したhead-up tilting(以下、HUT)であり、飲水なしのHUTと飲水後のHUTの計2回を異なる日に行った.飲水は500mlのミネラルウォーターを5分以内に飲むよう指示した.HUTは0°から60°まで15°ずつ、3分間隔で行った.血圧測定は日本コーリン(株)製BP-203iを使用し、心拍出量の計測はメディセンス(株)製MCO-101を使用した.被検者は測定1.5時間前より絶飲食とした.測定には被検者の急変に対応できるよう医師同伴にて実施した.尚、本研究は当院の倫理委員会の承諾を得ており、被検者に研究の主旨を説明し同意を得た上で施行している.<BR>【結果】<BR> 飲水なしでは3例とも30°~60°の時点で収縮期血圧(以下、SBP)と総末梢血管抵抗値(以下、TPR)が低下した.1例は45°の時点SBPが70mmHg以下を示し60°で気分不良を訴え測定中止となった.一方、飲水をした場合は、2例が飲水後10分以内にSBPが上昇し60°より低下したが、飲水なしの場合と比較して低下速度が遅いか高い数値を維持できた.飲水なしで測定中止となった症例はHUTによりSBPが低下したが飲水により80mmHg前後を維持した.3例ともTPRに関しても、飲水なしと比較して全過程を通して高値を示す結果を得た.<BR>【考察】<BR> Jordanらは健常者を対象にHUTにおける飲水の効果について報告している.今回、頸髄損傷者においても同様の結果が得られた事は大きな知見である.特に、測定中止となった症例では、飲水によりSBP とTPRは低下したものの維持する事ができた.脊髄損傷者の起立性低血圧は、入浴後や排便後に多く見られる.日常生活で起立性低血圧に対しどのように対応するかが重要である.もし飲水が排便後の低血圧症状に対しても有効であるならば、頸髄損傷者の日常生活における起立性低血圧の対応策の一手段となり得る.今後、症例数を増やすと共に排便後の低血圧症状に対して飲水が及ぼす影響についても検討していきたいと考える.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2008 (0), B3P3337-B3P3337, 2009
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205565572608
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- NII Article ID
- 130004580607
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed