腰痛疾患例における脊柱アライメントについて

説明

【目的】腰痛の要因として脊柱のアライメントや可動性があげられる.腰痛疾患例の姿勢を分析した研究や腰痛既往者と健常者との比較をした研究はあるが,腰痛疾患例,腰痛既往者と健常者の脊柱のアライメントや可動域を比較・検討しているものは少ない.そこで,本研究の目的は,腰痛疾患例,腰痛既往者と健常者の脊柱アライメントを比較し,腰痛との関連性を検討することである.<BR><BR>【方法】対象は,整形外科に腰痛治療で通院している腰痛疾患例14名(男性6名,女性6名,平均年齢46.0歳;以下,腰痛群),腰痛経験のある者14名(男性6名,女性6名,平均年齢41.6歳;以下,既往群),腰痛経験のない者14名(男性6名,女性6名,平均年齢37.2歳;以下,健常群)とした.全対象者には,本研究の趣旨を説明し同意を得て行った.脊柱計測分析器Spinal Mouse(Index社製)を用い,立位,前屈位,後屈位の矢状面の胸椎後彎角,腰椎前彎角,仙骨傾斜角を測定した.後屈位時は,機器の都合上,前方を見るように指示して行った.統計学的分析は,各群の椎体間の相関にピアソンの相関関係検定を用い,群間比較に一元配置分散分析を行い,事後検定には多重比較検定(Tukey-Kramer法)を用いた.尚,有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果】各群における椎体間の結果:腰痛群では,立位の胸椎カーブ(以下,胸椎)と腰椎(以下,腰椎),腰椎と仙骨傾斜角(以下,仙骨)に負の相関を認めた.また前屈位の胸椎と仙骨,後屈位の胸椎と腰椎に負の相関を認めた.既往群では,立位の胸椎と腰椎,腰椎と仙骨に負の相関を認め,前屈位の胸椎と腰椎に負の相関を認めた.健常群では,立位の腰椎と仙骨に負の相関を認め,前屈位の胸椎と腰椎,後屈位の腰椎と仙骨に負の相関を認めた.群間比較の結果:立位では,胸椎において腰痛群と健常群に有意な差を認めた.前屈では,胸椎において腰痛群と健常群に有意な差を認めた.また仙骨において腰痛群と既往群および健常群に有意な差を認めた.後屈では,腰椎において腰痛群と既往群および健常群に有意な差を認めた.<BR><BR>【考察】健常群,既往群では,立位,前屈位時に腰椎と仙骨および胸椎と腰椎に相関が認められ,隣接した椎体の相対的なアライメントの結果を得た.しかし,腰痛群では,立位時に,腰椎と仙骨に相関が認められたものの,前屈時には,胸椎と仙骨といった離れた椎体での相関を認め,腰椎の機能不全による結果が反映したものと考えられる.3群間の比較では,立位,前屈,後屈における胸椎,腰椎,仙骨の平均は,健常群,既往群,腰痛群の順で低下していた.特に立位,前屈位時には,腰痛群の腰椎の機能不全が胸椎や仙骨に影響して腰痛群と他の2群間に有意な差を認めたと考える.後屈時には,計測条件の問題で頭部から胸椎を固定する結果,腰椎のみに有意さが認められたと考えられる.今後,他の機能面を含めた詳細な検討が必要である.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1352-C3P1352, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565586816
  • NII論文ID
    130004580623
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1352.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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