膝関節軽度屈曲位歩行が筋活動に及ぼす影響
Description
【目的】臨床において、様々な原因で膝関節に伸展制限を呈する患者様を多く経験している.膝関節軽度屈曲位では、靭帯や骨による支持性が減少する為、筋を過剰に収縮させることで膝関節の支持性を高めていることが予想され、痛みの原因の一つになると考えている.膝関節軽度屈曲位での歩行と正常歩行との筋活動の相違を、表面筋電計を用いて計測し、分析・考察したのでここに報告する.<BR><BR>【方法】対象は本研究の主旨を説明し同意を得た、下肢に整形外科的疾患の既往のない健常成人男性15名(平均年齢21.8±2.3歳、平均身長168.4±5.3cm、平均体重60.5±13.4kg)とした.計測肢は利き脚(右下肢13人、左下肢2人)、測定動作は1)正常歩行、2)片脚膝関節軽度屈曲位歩行の2種類とし、1歩行周期中の立脚期について計測を行った.膝関節軽度屈曲位の状態は、膝関節伸展-30°の角度で非伸縮性テーピングを使用し固定した.測定機器は表面筋電図(Noraxon社製 Telemyo 2400T G2)を用い、筋電極間3cm、サンプリング周波数を1500HZとした.被験筋は大腿筋膜張筋(以下TFL)、縫工筋、大腿直筋、内側広筋、内側ハムストリングス、腓腹筋内側頭とした.母趾と踵にフットスイッチ(ノラクソン社製 ノルスイッチEM-434)を貼付し、2種類の動作で10m歩行を行ってもらいストップウォッチにて時間を測定した.各動作の10m歩行において筋電図波形を時間で積分し筋電図積分値(以下IEMG)の値を算出した.動的な運動時の筋電図積分値と筋力との関係をみる為に、徒手筋力検査にて各筋に対して3秒間の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction、以下MVC)を測定した.3秒間中の1秒間を選択し、積分値を算出し、得られた相対値(%MVC)によって活動量を正規化し%IEMGを求めた.解析にはマイオリサーチXPを用い、得られた値を、t検定を用いて統計処理を行った.<BR><BR>【結果】テーピング後の膝関節伸展角度は、-10±1.3°であった.膝関節軽度屈曲位歩行と正常歩行の立脚期における各筋の平均%IEMGの間に、有意差は認められなかった.10m歩行時間は軽度屈曲位歩行8.8±0.8秒、正常歩行8.5±1秒であり、有意に膝関節軽度屈曲位歩行に時間の延長を認めた.(p<0.05)<BR><BR>【考察】健常人における膝関節軽度屈曲位歩行と正常歩行との間に、立脚期中の各筋の平均的な筋活動に有意差を認めることはなかった.筋電図の波形から膝関節軽度屈曲位歩行の各相における筋活動を正常歩行と比べると、踵接地~足底接地でTFL、縫工筋、大腿直筋、内側広筋に増加傾向、内側ハムストリングスに減少傾向、踵離地で腓腹筋内側頭に減少傾向であった.このような傾向を明確にする為に、フットスイッチの添付する位置を工夫し、各相に分けて筋活動を計測することが今後の課題である.
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2008 (0), A3P2035-A3P2035, 2009
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205565611904
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- NII Article ID
- 130004580062
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed