関節拘縮を予防するために必要な関節可動域運動の検討
書誌事項
- タイトル別名
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- ラットにおける実験的研究
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説明
【はじめに】関節拘縮(以下,拘縮)は、日常生活動作に影響を及ぼす大きな原因の一つである。そして、拘縮の治療には多くの時間と労力を要する。したがって、拘縮は予防することが重要である。拘縮予防のため関節可動域運動を行う場合は、持続時間や施行頻度などを考慮する必要がある。関節可動域運動の持続時間について先行研究では、30分の持続的伸張運動が拘縮予防に最も効果的であったが、完全な拘縮予防はできなかったとされている。一方、関節可動域運動の施行頻度は、増えるほど拘縮予防に効果があると報告されている。しかし、これまでの先行研究では、拘縮予防を目的に30分の持続的伸張運動を1日2回行なった場合の効果について検討されていない。そこで、本研究は30分の持続的伸張運動を1日2回行うことで、拘縮を完全に予防することが可能かどうかを明らかにすることを目的とした。<BR><BR>【方法】8週齢のWistar系雌ラット23匹に実験初日から最終日までの7日間、右後肢を対象に足関節を最大底屈位にギプス固定した固定群(n=7)と、持続的伸張運動を実験2日目から最終日にわたって1日1回30分実施する群(n=8,以下,1回/日伸張群)、1日2回30分実施する群(n=8,以下,2回/日伸張群)とに振り分けた。実験期間中のラットは飼育ゲージ内で水と餌を自由に摂取できるようにした。持続的伸張運動時に加える力は、麻酔下でバネ秤を用い0.3Nと一定にした。また、麻酔は、実験への影響を除外するため全ての群に1日2回行った。足関節背屈角度(以下,背屈角度)の測定は、麻酔下で小型筋力計を用いて0.3Nの力を加えた状態で行った。統計処理は、実験前の各群間の背屈角度の比較に一元配置分散分析を、また各群の実験前後の背屈角度の比較を対応のあるt検定で行った。危険率は5%未満をもって有意とした。なお、本研究は、本学の研究倫理委員会の承諾を受けて行った。<BR><BR>【結果】実験前の背屈角度は、すべての群間で有意差を認めなかった。実験前後の背屈角度の比較から、固定群および1回/日伸張群には実験後に有意差をもって拘縮発生を認めた。また、2回/日伸張群は、実験前後で有意差を認めなかった。<BR><BR>【考察】本研究の結果から1回/日伸張群は、完全な拘縮予防ができなかった。これは、先行研究と同様に1日につき30分の持続的伸張運動は拘縮発生の予防に有効ではあるが不十分であることを示している。一方、2回/日伸張群は拘縮の発生を認めなかった。以上のことから、拘縮の発生を予防するために必要な関節可動域運動は、1日につき30分の持続的伸張運動を2回行うことであった。これは、関節可動域運動は施行頻度が増えるほど効果的であることを裏付けているものと思われる。今後は、組織学的な分析を含め1週間以上の固定期間における持続的伸張運動の拘縮予防効果について検討を行いたい。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), A0651-A0651, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205565684608
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- NII論文ID
- 110006800208
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可