後外側方へのリーチ肢位における体幹筋群の筋電図積分値と骨盤傾斜について

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抄録

【はじめに】我々は座位での様々な方向のリーチ肢位における体幹筋群の働きについて研究を進めてきた.昨年の本学術大会では、体幹筋の働きに左右差を認めた健常男性に着目し、後外側方へのリーチ肢位における左右差を筋電図と三次元動作解析装置を用いて分析し報告した.今回、昨年の報告をふまえそれぞれの対象者の後外側方へのリーチ肢位における左右差を検討・分析したので報告する.<BR>【対象と方法】対象は、特にスポーツ習慣がない健常男性5名(両側)とした.今回後外側へのリーチ肢位を分析するために、以下の測定課題時の体幹筋群の筋電図を測定し、同時に左右の腸骨稜、大転子および大腿骨外側上顆にマーカーを貼付し、姿勢解析(骨盤側方傾斜と後傾の測定)を行った.まず被験者に足底を床に接地した座位で両肩関節外転90度位を保持させ、テレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社)を用いて、体幹筋群の筋電図を測定し、UM-CATII(ユニメック社)により姿勢解析を行った.測定した体幹筋群はNgらの報告にもとづき、左右の外腹斜筋、腹斜筋群(重層部位)、内腹斜筋、Vinkらの報告より左右の多裂筋、最長筋、腸肋筋に電極を貼付した.次に今回の測定課題の開始肢位である体幹左右回旋45度位保持と以下の課題を実施させ上記同様に筋電図測定と姿勢解析を行った.測定課題は開始肢位より後外側方へ5、10、15、20cmとリーチさせ、それぞれの姿勢を保持させた.リーチ距離の設定は、自作の移動距離測定器を片側の肩関節外転90度位を保持させた指尖から回旋45度方向に一直線になるよう配置し、測定中は前方の一点を注視させた.筋電図の分析は、それぞれの筋電図積分値を算出し、座位での肩関節外転90度位保持での筋電図積分値を1とした相対値を求めた.なお、対象者には本研究の目的を説明し同意を得た.<BR>【結果と考察】各対象者における後外側方へのリーチ距離を変化させた時の肢位保持には、特にリーチ側と反対側の体幹筋群の働きに個人差や左右差が存在した.また骨盤の側方傾斜と後傾は、リーチ距離が増大すると増加したが、その増加パターンは上記した反対側体幹筋群の働きの違いを反映しているものと考えられた.一昨年の本学術大会において我々は、後外側方へのリーチ肢位の保持には、反対側腹斜筋群の働きにより骨盤の側方傾斜と体幹の後方への制動を行うと報告した.今回、リーチ距離の増大により反対側腹斜筋群(重層部位)の筋電図積分値のみが増大し、骨盤の側方傾斜が後傾と比較して多く出現していると考えられるパターンや、反対側外腹斜筋の筋電図積分値のみを増大させて、骨盤の後傾が移動距離初期からより出現していると考えられるパターンなどが認められた.今後は動的場面での検討により、筋活動のタイミングと骨盤傾斜(側方傾斜および後傾)の出現パターンなどを調べることで、より体幹筋群の機能を明確にしていきたいと考えている.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1128-A3P1128, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565700224
  • NII論文ID
    130004579976
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1128.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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