側方重心移動動作における上半身重心・坐圧中心軌跡の特徴

  • 秋吉 直樹
    おゆみの整形外科クリニックリハビリテーション科
  • 櫻井 好美
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 石井 慎一郎
    神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科理学療法学専攻

この論文をさがす

説明

【目的】臨床の場面で,患者に側方重心移動動作を指示する事が多い.しかし,理学療法士が意図した動作を患者に伝えることは難しく,どのような環境設定や言語教示が有効であるか分析していく必要があると考える.今回,第一段階として側方重心移動動作時の上半身重心(UCOG),坐圧中心(COP),体幹アライメントを分析することでその特徴や傾向を捉えることを目的とした. <BR><BR>【方法】対象は健常成人男性12名(年齢23.8歳)とした.端坐位での側方重心移動動作を運動課題とし,股・膝関節90°屈曲位,両足底接地,体幹の質量を意識的に両坐骨上に乗せた端坐位から,肩を水平にしたまま右坐骨上へ体重移動し元の姿勢に戻ることとした.計測は,3秒で体重移動し3秒で元の姿勢に戻る条件(3秒条件)と1秒で同様に行う条件(1秒条件)で各3回ずつ実施した.なお,足部が接地面から離れないこと,上肢をバランス反応に使わないことを伝えた.計測時,マーカーを両側肩峰,胸骨柄,剣状突起,第1・10胸椎棘突起,両上前腸骨棘,両上後腸骨棘中間点に貼付し,三次元動作解析装置VICON612(VICON-PEAK社製)と床反力計(AMTI社製)を使用し,UCOG,COP,体幹屈曲・伸展・側屈・回旋角度を算出した.また,各条件につき波形同期平均ソフトEpsylon Syncsを用いて平均化し,各被験者のUCOG,COPの動きと体幹アライメントの特徴を分析した.<BR><BR>【結果】12例24動作中,20動作において右への重心移動に先行して逆方向へのCOPの移動が観察された.逆方向へのCOPの移動が見られなかった4動作は全て3秒条件であった.また,運動実施時のUCOG,COPの水平面の軌跡は,12例中7例は移動方向が一致していたが,5例は移動方向が一致していなかった.この 5例は,他の7例と比較して重心移動時の体幹左側屈に伴う右回旋が少なく,左回旋する例や回旋がみられない例があった.また体幹の屈曲-伸展といった矢状面での動きが大きい傾向があった.<BR><BR>【考察】重心移動に先行した逆方向へのCOPの移動は,歩行など動き始めの制御と一致しており,この初期のCOPの変化により効率的な側方への重心移動を可能にしていると考えられる.また,3秒条件でCOPの逆方向への移動が見られない例があったことは,藤澤らのいう側方重心移動動作の制御機構が速度依存性であることを示唆している.水平面でのUCOG,COPの軌跡に関しては,UCOGとCOPの移動が一致していなかった5例は,体幹の屈曲-伸展といった矢状面の動きや脊柱のカップリングモーションに反した運動が観察されており,胸腰椎の屈曲(伸展)方向の易可動性や体幹深層筋の機能低下により回旋運動が制限されている可能性が示唆される.今後は,体幹機能(胸腰椎の可動性,体幹深層筋機能)との関連性を再検討し,有効な介入方法を構築していきたいと考える.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0845-A0845, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ