肩甲骨面挙上角度と肩内旋トルク・筋活動の関係

DOI
  • 中山 裕子
    新潟中央病院リハビリテーション部 新潟医療福祉大学大学院理学療法学分野
  • 大西 秀明
    新潟医療福祉大学大学院理学療法学分野
  • 中林 美代子
    新潟医療福祉大学大学院理学療法学分野 新潟県はまぐみ小児療育センター訓練部
  • 高橋 美紀
    新潟中央病院リハビリテーション部
  • 関原 枝里
    新潟中央病院リハビリテーション部

抄録

【はじめに】最大肩回旋トルクは肢位により変化することが報告されているが,肩内旋トルクに関しては一定の見解が得られていないのが現状である.最大トルクが運動肢位により変化する要因としては,筋活動量の変化等の神経生理学的要因と,上腕骨長軸と筋線維走行の成す角度および筋の長さ張力関係などの運動力学的要因の2つが挙げられる.われわれは第42回大会で肩甲骨面上肢挙上角度と肩甲下筋の筋活動の関係について報告し,肩甲下筋の部位による収縮特性を明らかにした.今回,他の内旋共同筋の活動状態を検討したので報告する.<BR>【対象と方法】対象は健常成人12名(男性6名,女性6名,平均年齢28.5±5.6歳)であった.測定は椅子座位にて肩甲上腕関節内外旋中間位とし,上肢下垂位,肩甲骨面挙上60度,120度に固定した肢位で5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動を2回行った.内旋トルクの測定は筋力測定器(BIODEX SYSTEM3)を使用して行った.筋活動は表面電極にて大胸筋鎖骨部,大胸筋胸骨部,広背筋から導出した.筋電図は前置増幅器(DPA-10P,ダイヤメディカルシステムズ)および増幅器(DPA-2008,ダイヤメディカルシステムズ)を用いて増幅し,サンプリング周波数1KHzでパーソナルコンピューターに取り込み,運動開始後1秒後以降で最大トルクが発揮された時点から0.5秒間を積分した(IEMG).最大トルク値(PT)とIEMGは上肢下垂位の値を基に正規化し(%PT,%IEMG),挙上角度による比較を行った.統計処理には分散分析と多重比較検定(有意水準5%未満)を用いた.<BR>【結果】%PTについては,挙上60度が130.5±36.7%,120度が76.2±17.6%であり,60度が最も高く,次いで下垂位(100%)であり,120度が最も低い値でそれぞれ有意差を認めた.%IEMGについては,大胸筋鎖骨部の60度が90.5±18.9%,120度が73.6±27.9%で120度は下垂位(100%)に比べ有意に低い値であった.大胸筋胸骨部は,120度(72.8±23.7%)が下垂位(100%)および60度(106.3±34.2%)に比べ有意に低い値であった.広背筋は60度が123.6±28.3%,120度が136.9±36.7%であり,120度は下垂位(100%)に比べ有意に高い値であった.<BR>【考察】今回の測定肢位においては,%PTは挙上60度で最も高い値を示した.これは大胸筋や肩甲下筋等の内旋筋群が張力を発揮しやすい筋長であったことと,各筋の収縮ベクトルが上腕骨回旋運動方向に対して最も効率が良かったためではないかと考えられる.本研究結果から,肩内旋運動において,上腕骨挙上角度の変化により内旋トルクおよび関連筋群の筋活動が変化することが明らかとなった.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1042-A1042, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565808128
  • NII論文ID
    130005014972
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1042.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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