変形性股関節症が及ぼす膝関節アライメントの検証

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  • ―単純X線画像を用いて―

抄録

【目的】<BR>当院に人工股関節全置換術(以下THA)目的で来院される変形性股関節症(以下股OA)患者の膝関節のX線画像をKellgren&Lawrenceの分類に準ずると、膝関節痛を訴えない患者を含めてもほぼ全症例が変形性膝関節症(以下膝OA)の予備軍であるといえる.股関節に起因する膝OAを呈する症例はcoxitis kneeと呼ばれ、その病態に対して脚長差による影響や、股OAの対側膝に痛みを訴える症例が多いなどという報告は散在しているものの、そのメカニズムについては不明な点が多い.脚長差以外の要因と膝関節との関連について、特に骨盤傾斜などとの関連を示す研究報告は少なく、未だ統一の見解をみていない.骨盤傾斜を調査することは静的立位や、歩行などの動的場面での膝関節への荷重のメカニズムを明らかにするには不可欠な情報であると考える.今回は脚長差に加え骨盤傾斜などと膝関節との関連を調査することが二次的な疼痛の予防・軽減へ向けたアプローチへの一助となると考え本研究を行った.<BR>【方法】<BR>対象はTHA目的で当院入院した股OAのうち、当院倫理規定に準じ調査した患者48名女性.64±9歳.立位時の全下肢の正面からの単純X線像を基に、1.脚長差、2.両側膝外側角(以下FTA)、3.両側脛骨傾斜(床面に対する脛骨の長軸が成す角)、4.前額面上の骨盤傾斜(左右の上前腸骨棘を結ぶ直線と床面に平行な線とが成す角)、5.矢状面上の骨盤傾斜(骨盤腔の最大横径を縦径で除した値)を測定した.尚左右のFTAと脛骨傾斜は股OA側とその対側に分けて各パラメーターと比較検討した.統計解析はPearsonの相関係数を用いて危険率は5%未満とした.<BR>【結果】<BR>脚長差と前額面上の骨盤傾斜、脚長差と股OA側のFTA、また同側同士のFTAと脛骨傾斜との間には有意な負の相関が認められた.脚長差と股OA側の脛骨傾斜との間については有意な正の相関を認めた.一方、脚長差と対側FTAや脛骨傾斜との相関や、矢状面上の骨盤傾斜と左右のFTA及び脛骨傾斜との相関は認められなかった.<BR>【考察】<BR>脚長差が増大に伴い骨盤は股OA側に傾斜する傾向がみられた.また脚長差の増大に伴い股OA側膝は外反傾向を示した.股OAの進行に伴う大腿骨頭の外上方への偏移による被覆率の減少を防ぐために、脛骨を内側方向へ傾斜させることでFTAを減少させ外反位をとり、同側へ骨盤を傾斜させ骨頭の被覆率を増加させていると推察される.これらは骨頭を求心位に保つための一方略と考えられる.今回は前額面及び矢状面上での骨盤傾斜と膝関節アライメントとの直接的な関連を見出すことはできなかった.この原因としては骨盤より上方の脊柱アライメントや関節拘縮の程度や歩行動態など様々な因子が関与しているのではないかと思われる.今後これらの分析を進めより詳細な検討をする必要があると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1403-C3P1403, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565834496
  • NII論文ID
    130004580672
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1403.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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