変形性膝関節症患者と住環境との関連性(第1報)

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タイトル別名
  • ―手術施行患者と保存患者を比較して―

抄録

【はじめに】変形性膝関節症(以下膝OA)の発症悪化要因については,多方面からの研究が行われている.特に身体的因子や生活習慣については報告されており,肥満,女性,非喫煙,日常生活の活動性などが,膝OAとある程度の関与があるとされている.一方本邦における膝OAの発症には,日本特有の生活スタイルが関与しているとも言われている.本研究の目的は,膝OAの発症,悪化と住環境との関連性の有無を検討することで,予防的見地から住環境整備の必要性を検討することである.<BR>【対象】医師の診察において膝OAと診断され,アンケート調査に協力いただけた20症例を対象とした. 内訳は保存11例(以下保存群)(年齢:68.1±5.3歳 性別:男性2例 女性9例 BMI:23.9±2.4),人工関節手術後9例(以下手術群)(年齢:69.1±10.9歳 性別:男性3例女性6例 BMI:25.7±5.5)であった.なお2群において上記3項目における有意差は認められなかった.<BR>【方法】アンケート項目は居住年月,現住居の種類(家/マンション),生活スタイル(床/椅子),寝具(ベッド/布団),階段の有無,トイレ(様式/和式),家の方のみに対して何階建て,寝室階,主生活階を調査した.調査時期については,保存群は現在の住環境,手術群は手術前の住環境を調査し,住宅改修を実施していないことを条件とした.その後統計分析は,各項目をFisherの直接確率計算法,Kruskal-Wallisの検定を用いて2群間で比較した.有意水準は5%未満とした.なお本研究の目的等に関しては,対象者に十分な説明を行い,同意を得た上で実施した.<BR>【結果】居住年月,現住居の種類,階段の有無,トイレ,何階建て,寝室階,主生活階については有意差は認められなかった.生活スタイルは保存群で有意に椅子が多かった. (P=0.01)また寝具は保存群で有意に布団が多かった. (P<0.01)<BR>【考察】本研究では,手術適応の膝OA進行症例は,床生活を行っていないことが認められた.疼痛や可動域制限が床生活を困難にしていると推測される一方,比較的軽度であると思われる保存症例が,床生活を送り続けると膝OAを進行させる可能性を予見させる結果でもあった.井原は,正坐やあぐら,しゃがみこみ位が軟骨変性を助長すると述べている.一方古賀は,縦断的調査で正座の習慣がないほど膝OAが,進行する傾向があったと報告している.また床からの立ち上がりも関節へのストレスが大きく,床生活の中のどのような動作が,膝OAの発症,悪化につながるのかも検討していく必要がある.今回の研究は横断的研究であり,床生活がOAを発症,悪化させる要因であるとは断定できないが,住環境整備においても着目すべき点と考えられる.今後は症例数を増やすと共に,縦断的に調査し,予防的見地からの住環境整備の必要性を確認したい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), E3P2201-E3P2201, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565858560
  • NII論文ID
    130004581311
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.e3p2201.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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