投法の違いによる上肢関節および体幹の運動学的差異に関する分析

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  • ―オーバースローとサイドスローの比較―

抄録

【目的】投球動作はリリースにおける体幹側屈角度を指標として,オーバースロー,スリークォータースロー,サイドスロー,アンダースローの4タイプに分類されている.オーバースローについては,様々な研究がなされており,一定の見解が得られている.一方,サイドスローについては肘関節への負荷が大きく,障害の頻度が高いという報告や肩関節への負荷が少ないという報告があるものの,その数は少なく,またこれらの理由を検討した報告も少ない.そこで本研究では,肩関節最大外旋位(MER)前後での,オーバースローとサイドスローにおける上肢関節および体幹角度変化を比較し,各投法による肩,肘関節への影響の違いを検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象は大学野球部投手14名(年齢20.6±1.7歳,身長176.9±4.5cm,体重71.0±5.7kg,野球歴11.0±2.2年)とした.対象に,オーバースローおよびサイドスローでの投球を行わせ,三次元動作解析にて足部接地からリリースまで(100%に規格化)の各関節角度を算出した.算出した角度は体幹側屈角度,肩関節外旋角度,肩関節外転角度,肘関節屈曲角度,前腕回外角度とし,オーバースローとサイドスローの間で比較した.統計学的検定には繰り返しのある二元配置分散分析を用いた.危険率5%未満を有意とした.<BR><BR>【結果】オーバースローでは,体幹は時間の経過とともに骨盤に対して投球側と反対方向へ側屈していた.一方,サイドスローにおける体幹側屈角度はほぼ一定であり,リリース時は骨盤に対して投球側方向へ側屈していた.肩関節外旋角度,肩関節外転角度はMER前後において両投法間に有意な差は見られなかった.肘関節屈曲角度は全位相においてサイドスローがオーバースローより減少していた.前腕回外角度は,サイドスローがオーバースローより位相の61~88%で有意に増加し,位相の89~100%では有意に減少しており,MER前後で急速に回内運動が生じた.<BR><BR>【考察】本研究では,サイドスローは,オーバースローと比較して体幹側屈角度が異なっていたものの肩外転角度はほぼ同様の結果を示した.サイドスローに対して,オーバースローでは後期コッキング期以降,投球側と反対方向への体幹側屈によって生じる肩関節内転トルクに抗し,肩外転角度を維持する必要があり,腱板を含めた肩外転筋群により大きな負荷がかかる.その一方で,サイドスローでは体幹側屈角度はほぼ一定であり,肩外転筋群への負荷はより少ないと考えられる.また,サイドスローでは肘関節伸展傾向であることから,外反トルクによる肘関節内側側副靱帯への負荷が増大し,さらにMER前後での急速な前腕回内運動により上腕骨内側上顆への負担が大きくなる.以上より,サイドスローはオーバースローより肩関節への負荷が小さく,肘関節への負荷が大きい可能性が示された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1435-C3P1435, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565859840
  • NII論文ID
    130004580701
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.c3p1435.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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