肩甲骨面での上肢外転・内転運動における肩甲上腕リズムと筋活動の検討

Description

【はじめに】肩の疾患において肩甲骨の不安定性や肩甲上腕リズム (SHR) の乱れが報告されている.ほとんどの上肢の挙上に関する筋電図解析の研究は,外転角度をいくつか設定し静止位で行っており,三次元動作解析装置と筋電図解析装置を同期させた運動時の表面筋電図を検討した報告は少ない.【目的】本研究の目的は肩甲骨面における上肢外転・内転運動時の SHR と肩甲骨周囲の表層4筋の表面筋電図の関連について調べることである.【対象と方法】 対象は書面にて同意を得た肩に症状のない健常成人 18 名 (19~30 歳,男性 14 名女性 4 名).体表マーカーは,基本的立位肢位で,烏口突起,肩峰角,肩甲棘内縁,肩甲骨下角,上腕骨外側上顆および内側上顆,Th2,Th7 及び L5 棘突起を触知し体表に貼付した.測定は,上肢外転・内転時の画像データを三次元動作解析装置 (MAC 3D System,MotionAnalysis 製) に取り込み (frame rate 50Hz),角度情報を三次元動作解析ソフト (KinemaAnalyzer,キッセイコムテック製) を用いて解析した.SHR は,上肢外転・内転時の肩関節上方回旋角度 10 度ごとに算出した.<BR>筋電図は,三角筋中部線維 (DM),僧帽筋上部線維 (TU),僧帽筋下部線維 (TL) 及び前鋸筋下部線維 (SA) 上の皮膚表面を前処理して表面電極を貼付し,運動中にテレメータ筋電計 (MQ8,MARQ Medical 製) を用いて取り込み (sampling rate 1kHz),三次元動作解析装置と同期した後,多用途生体情報解析システム (BIMUTA II,キッセイコムテック製) を用いて解析した.筋電図は 0 度から 10 度ごとに抽出し,各波形はフィルタ処理 (バンドパス10~350Hz),基線算出,200msでリサンプリングしたのち,200ms の積分値を求めた.上肢外転 120~130 度における 4 筋の積分値を合計し,肩甲骨上方回旋角度 10 度毎の積分値を除して正規化し百分率(比率)で表した.筋活動のパターンは,利き手側と非利き手側の同じ外転・内転 10 度ごとの区間の積分値の比率を用いて比較した.<BR>本研究は,郡山健康科学専門学校の倫理審査委員会の審査により承認されたものである.【結果】4 筋の筋活動の出力パターンの傾向をみると,外転時,最大手前までは 4 筋とも利き手側が大きいが,最大時には,DM と SA の非利き手側が逆転し大きくなった.内転時は,DM と TL の利き手側が大きいが,TU とSA に大きな違いはなかった.【考察】肩甲骨面での上肢外転・内転運動では,SHR の解析においては,利き手側と非利き手側に統計学的に差がないことを World Physical Therapy 2007 において報告した.本研究の結果から,利き手側と非利き手側では,筋活動の出力パターンに関しては傾向の違いが観察された.運動中の表面筋電図においては,角度変化に伴う電極のズレなどを考慮しなければならないが,この傾向の違いは,利き手と非利き手の運動学習の差異や中枢神経系の関与が影響している可能性が示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565895552
  • NII Article ID
    130004579959
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1109.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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