左片麻痺および右下腿切断、長期臥床症例に対する歩行訓練の試み

説明

【はじめに】<BR> 臥床により、患者は筋力低下・ROM制限、心肺機能の低下などの廃用症候群が生じる.我々は離床を促し、運動負荷を加える事で廃用症候群の予防・改善、ADLの維持に努めることが使命であるが、重複重症例に対して消極的になっている時がある.今回、右脳梗塞後左片麻痺に右下腿切断を合併し、1年以上寝たきりとなった症例に対し、義肢装具を用いた立位・歩行訓練などの運動療法を行い、ADLが改善したので報告する.<BR>【症例紹介・リハ開始時の現症】<BR> 症例は67歳、男性.2001年から3度右脳梗塞を発症し、軽度の左片麻痺となった.2006年右足部壊死に対し他院で右下腿切断術を施行、2007年に施設入所待ちの間の糖尿病コントロール目的で当院入院となったが、終日ベッド上で寝たきりの状態であった.入院1年後の本年4月、新たに赴任してきたリハ医師の依頼により理学療法開始となった.リハ開始時、意識清明で高次脳機能障害及び感覚障害は認めなかった.左片麻痺はBrunnstrom Stage手指1、上肢2、下肢3レベル、非麻痺側上下肢のMMTは3レベルであった.また麻痺側の筋緊張は高く、ROMは左肘関節30度・両膝関節10度の屈曲位拘縮が認められた.ADLは食事のみ自立しその他は全介助レベルであった.また、発表に際し患者および家族の了承を得た.<BR>【リハ施行の目的と経過】<BR> 長期臥床のリスクからの離脱が第一義と考え、当初から高負荷の運動療法を行う方針とした.Tilt tableによる自動的立位では負荷が不十分と考え、自動的立位・歩行負荷を与えるため、右下腿義足、左長下肢装具が処方された.しかし、義肢装具の作製に対する家族の了承が得られず業者に制作を依頼できなかった.そこで、義肢装具会社の協力を得て、安全上問題のないジャンク部品を供給して頂き、我々リハスタッフで右下腿訓練用義足を作製した.当初、立位保持は全介助であったが、徐々に切断肢での荷重が可能となった.ついで左長下肢装具を装着し、歩行訓練を追加した.その結果、体幹・非麻痺側上下肢の筋力はMMT4レベルに改善し、座位保持は監視レベル、立位保持は軽度介助レベル、立ち上がりと歩行は中等度介助レベルに改善した.その後、他院に転院となった.<BR>【考察】<BR> 近年では、早期退院早期リハ離脱が叫ばれているために重複障害例にはリハを施行せずに寝たきりにしている症例がみられる.本症例も脳梗塞左片麻痺と非麻痺側下腿切断という重複障害であるため、1年以上寝たきりにさせられた.我々は可能性を追求し、長期臥床から離脱させるため右下腿訓練用義足・左長下肢装具を作製し、立位・歩行訓練を積極的に行い、ADLの改善に成功した.リハの原点に立ち戻り、義肢装具を用いて立位・歩行訓練など、高負荷の運動療法を積極的に実施することが、いかに重要であるかを再確認する事ができた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P2315-B3P2315, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565906304
  • NII論文ID
    130004580507
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p2315.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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