回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者の歩行自立度評価について

  • 伊集 章
    大浜第二病院リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • カイフクキ リハビリテーション ビョウトウ ニ オケル ノウソッチュウ ヘンマヒ カンジャ ノ ホコウ ジリツド ヒョウカ ニ ツイテ

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抄録

【目的】<BR> 近年、在院日数の短縮化が図られ、脳卒中リハビリテーションにおいても早期で患者様の歩行自立を判断するための指標の検討が必要と考える.そこで本研究では、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)に入院中である脳卒中片麻痺患者様(以下、片麻痺患者)を対象とし、歩行自立度評価について動的バランス評価および歩行能力の評価であるTimed up and Go Test(以下、TUG)、Functional Reach Test(以下、FRT)、10m歩行所要時間(以下、10m歩行)を用いて比較検討し、若干の知見が得られたので報告する.<BR>【方法】<BR> 対象は、本研究の主旨に同意が得られた当院回復期病棟に入院中の自力(自立群・監視群)で歩行が可能な片麻痺患者31名(男性15名、女性16名.平均年齢65.5±13歳.監視群15名、自立群16名).各評価項目の測定は、日常使用している杖・補装具を用いた.統計学的解析は、判別分析にて歩行自立度評価の判別式を求め、歩行自立度に対する各評価項目の重みを求めた.歩行自立度評価の判別式はχ二乗検定にて有用性を判定した.自立群の各評価の測定値における平均値の得点をカットオフ値とし適中率を求めた.<BR>【結果】<BR> 線形判別関数は、Z=-0.1255×x1+0.088×x2-0.0173×x3+1.8863と求められ、χ二乗検定にて有意水準5%で判別式として適用した.正判別率としては、自立群が94%、監視群が73%であった.歩行自立度に対する各項目の重みは、TUGが2.06054、FRTが0.50149、10m歩行が0.27592であった.各カットオフ値(適中率)は、TUGが17秒(75%)、FRTが25cm(50%)、10m歩行が17秒(67%)であった.<BR>【考察】<BR> 本研究において、歩行自立度判定の判別式が得られ、正判別率としても高い値として得られた.この結果より、回復期病棟に入院されている患者様の歩行自立度を判定していく上での一指標として利用できるものと考える.また、自立度判定評価項目で最も影響が大きいのはTUGであるという結果が得られた.これは、FRT・10m歩行の直線的な評価と比べ、TUGの特徴である、椅子座位から「立つ・歩く・回る・座る」という日常生活動作が含まれている課題指向型評価であるということが一つの要因と考える.具体的に述べるとTUGの課題を安全により早く達成していく為に方向転換や対象物を避ける等の速度の調整を行なっているものと考えられる.また、各評価項目の適中率においてもTUGが高かった.以上の事より歩行自立度に対する評価項目において最も自立に対する影響が多いのはTUGであるという事が示唆された.今後の展開としては、片麻痺患者だけではなく、他疾患等の患者様も対象として比較検討し、回復期病棟内における歩行自立への移行に際してその一助になればと考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P2292-B3P2292, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

被引用文献 (1)*注記

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