能動的および受動的な触識別時の脳内機構について

書誌事項

タイトル別名
  • ―機能的MRIによる分析―

説明

【目的】<BR>我々は,機能的MRIを用いて触覚による識別時の脳内機構について,触知覚時と触識別時では,運動は同一であっても異なった脳内機構であることを明らかにし,さらに触識別時では両側の感覚運動野(Sensorimotor cortex;SMC)が賦活することを報告している.しかし,実験課題に手指の運動が伴っており,純粋な触識別時の脳内機構とはいいがたい.そこで,今回は能動的な触識別時(以下,アクティブタッチ)と受動的な触識別時(以下,パッシブタッチ)の脳内機構を比較,検討することで,より厳密な触識別時の脳内機構を明らかにすることが目的である. <BR>【対象】<BR>対象は,右利きの健常成人男性5名(平均年齢18.6歳)であり,対象者全員に研究の趣旨や測定方法などを十分に説明し,書類にて同意を得ている.また,本研究は首都大学東京および植草学園大学の研究倫理委員会の承諾を得て行っている. <BR>【方法】<BR>データ測定はGE社製1.5T臨床用MR装置(Signa Horizon)を用いて行い,スキャン時間は2つの課題と安静を各30秒間のブロックデザインで,各課題を2回撮像した.被験者は, MRI内で閉眼にて仰臥位となり,右母指にてアクティブタッチ課題とパッシブタッチ課題を行った.両課題は,2つの固定された麻雀牌の図柄が一致か,相違かの識別を能動的もしくは受動的に行う課題である.画像データの解析には,SPM2を用いて,位置補正,標準化,平滑化を行い,有意水準を0.05として賦活領域とした. <BR>【結果】<BR>賦活部位に関しては,両課題で左SMCにおいて明らかな賦活が認められた.また,アクティブタッチ課題では,対象者の中に両側のSMC,下側頭回,体性感覚連合野においても賦活が認められた.全脳内賦活量は,アクティブタッチ課題は535.6ボクセルに対し,パッシブタッチ課題は118.6ボクセルであり,アクティブタッチ課題の脳内賦活量はパッシブタッチ課題と比較し,有意に増大した. <BR>【考察】<BR>今回,アクティブタッチにて両側のSMCや下側頭回や体性感覚連合野にも賦活が認められた.この要因として触覚以外にも固有受容覚などが情報処理に参加していることが考えられ,異種感覚統合や指先の運動制御が必要となるため,多くの領域が賦活したと考えられる.一方,パッシブタッチでは,賦活領域は左SMCに限局していた.つまり,同じ識別であっても異なった脳内メカニズムであることが考えられる.ギブソンも能動的触覚と受動的触覚は情報処理が異なるとしている.また,単なる運動制御での脳内機構とも異なり,アクティブタッチの特徴が,このような両側性の脳内機構ではないかと考えられる.理学療法では,感覚の重要性は熟知されているが,その情報がどのようにもたらされたものかを考慮する必要があるのではないか.今回は対象者が少数であるが,今後対象者を増やし,より詳細な脳内機構を明らかにしたい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1082-A3P1082, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565956224
  • NII論文ID
    130004579933
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1082.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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