体幹動揺量と筋力の関係からみた高齢者の後方ステップ反応特性

Description

【目的】高齢者の転倒は重大な障害に結びつくことが多く、日常生活活動の低下や介護度の悪化を招く.高齢者の転倒予防を内的要因から考えるとき、新たな支持基底面をつくり、その上に身体重心を保持させるステッピング反応に着目する必要があろう.さらに身体の合成重心の制御能力を考えるとき、骨盤帯を含めた質量の大きい体幹部に着目することが重要と考える.本研究の目的は、高齢者の後方ステップ反応時の体幹動揺量とその制御に関与する筋力との関係について調査することである.<BR>【方法】対象は日常生活動作が自立しており、後方へのステップ動作が可能な地域在住高齢者11名(年齢75.5±6.9歳)とした.全ての被験者には口頭および書面にて研究の趣旨を説明し同意を得た.被検者は左右分離型フォースプレート(Anima製G-6100)上で両足をそれぞれ別のプレートに位置させ、静止立位を20秒間保持した.その後、検者の合図に従って後方向へ重心を最大限移動し、片脚を後方へステップする課題動作をおこなった.課題動作中の体幹動揺量として、被験者の第7頚椎(C7)と第2仙椎(S2)背部に小型三軸加速度計(JES製JA-30SA36-15A)を貼りつけ、サンプリング周波数200Hzで記録した.さらに被検者の筋力(体幹屈筋群、股屈曲・伸展筋群、股外転・内転筋群、膝屈曲・伸展筋群、足背屈・底屈筋群、足内がえし・外がえし筋群、足趾屈筋群;すべて支持脚側)を徒手筋力計(HOGGAN HELTH INDUSTRY製MICROFET)を用いて計測した.後方ステップ動作は、片側の足部が離床する時期を床反力値から同定し、同側の足部が再び接地する時期を加速度波形から同定した.ステップ中、力学的に最も不安定となる支持脚での片側立位期間の体幹動揺量として加速度の実効値を算出した.統計処理はC7とS2の動揺量の差にはt検定を用い、さらに体幹動揺量と筋力との関係を見出すために、体幹動揺量を従属変数、各筋力を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った.<BR>【結果】C7とS2間の動揺量には有意な差は認めなかった.重回帰分析の結果では、片脚立位期の体幹動揺量の有意な独立変数として、膝屈筋群と股外転筋群が検出された (C7: R2=0.83,自由度調整済R2=0.78、S2: R2=0.70,自由度調整済R2=0.62).<BR>【考察】体幹動揺の有意な独立変数として検出された膝屈筋群は坐骨結節から起り、膝伸展位では前後方向への骨盤の安定性に重要な役割を有し(Kapandji,1987)、股外転筋群は骨盤の側方安定性に関与する.後方へのステッピング動作では両脚から片脚立位時に側方への加速度が生じ、続いて後方への加速度が生じることからも、これら筋力の関与が示唆される.本研究の結果、高齢者の後方ステッピング反応時の体幹動揺は上部(C7)と下部(S2)で同程度であり、片脚立位時の動揺には骨盤の側方・前後方向の安定性に作用する膝屈筋群と股外転筋群の関与が示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565966208
  • NII Article ID
    130004581266
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.e3p1236.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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