水浸による中心循環血液量の増加は呼吸化学調節系の末梢プラントでの換気応答に変化をもたらす

説明

【目的】水浸時(以下WI)には呼吸機能への影響として分時換気量(V(dot) E)の減少が報告されている.しかしその主たるメカニズムは明らかにされていない.近年、我々は呼吸の化学調節フィードバックシステムの換気(動作点)決定機構を定量的かつ統合的に評価するための方法論を開発し、WIの中心循環血液量増加が、呼吸化学調節系の中枢コントローラ(延髄呼吸中枢領域などの制御部)特性の機能的変化(リセッティング)をもたらし換気を低下させることを昨年度の学会にて報告した.しかし昨年度の研究では安静時WIの換気低下が中枢コントローラ特性の変化によって生じていることしか検証できておらず、末梢プラント特性の変化まで解明できていない.そこで今回、WI条件下において安静時換気抑制をもたらす呼吸調節の換気決定メカニズムについて、肺胞領域や胸郭呼吸筋など被制御部である末梢プラント特性の変化について検証した.<BR><BR>【方法】健常男子7名(年齢24.4±6.2才、身長170.7±3.1cm、体重65.0±9.3kg)を対象とした.横隔膜レベルまでのWI(水温33.9±0.3°C)と水浸のない条件下 (コントロール)で、立位安静12分後、中枢コントローラ特性の検証で得られた各一回換気量と呼吸回数を各人毎でモニターによりビジュアルフィードバックさせ、V(dot) Eを12分間意識的に変えることにより、種々の換気量の定常状態において終末呼気二酸化炭素分圧(PETCO2 )の測定を行った.V(dot) E→PETCO2 関係をPETCO2 =A/V(dot) E+Cの式を用いて双曲線近似し末梢プラント特性を定量化した.換気、代謝諸量の測定は、呼気ガス分析装置(アルコ社製)を用いbreath-by-breath法を採用した.心拍数(HR)はテレメーター心電計を使用した.すべての計測機器から得られたアナログ信号は同期してコンピュータに取り込み、デジタル化した後、オフライン処理にて測定評価を行った.なお本研究は、平成20年度に森ノ宮医療大学における倫理委員会に申請し承認を得て行った.<BR><BR>【結果】末梢効果器特性においては、コントロール群よりもWI群において双曲線の定数C値が有意に増加(14.3±4.8 vs 6.6±6.1,p<0.05)したが、A値は変化しなかった.WI群ではV(dot) Eの安静時においては末梢効果器特性への影響は少ないが、換気が亢進するにつれPETCO2 が貯留しやすくなる結果となった.これにより、WIによる中心循環血液量の増加は、中枢コントローラ特性だけではなく末梢プラントも変化させることが明らかとなった.今後は末梢プラントにおいて、WIの静水圧による胸郭の可動制限などの他の換気低下因子を除外し検証していく必要がある.<BR>【結論】水浸による中心循環血液量の増加は呼吸化学調節系の末梢プラントでの換気応答に変化をもたらす.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1095-A3P1095, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205565974784
  • NII論文ID
    130004579946
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1095.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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