変動係数を用いた歩行運動の運動学的分析

  • 福士 宏紀
    いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部
  • 鎌田 一葉
    いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部
  • 関 公輔
    いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部

説明

【はじめに】人間の動作は常に変動していると考えられる。しかし、従来のバイオメカニクス研究において、変動には測定誤差が混在していると考え除去されることが多い。近年、動作の変動が動作特性を示している可能性を示唆する研究もあり、注目されるようになってきている。<BR> 本研究では、定常歩行での下肢各関節の運動を三次元動作解析装置にて計測し、その個体間変動から歩行運動の特徴を分析することを目的とする。<BR>【方法】研究の趣旨と内容の説明を行い、参加に同意の得られた健常男性10名(年齢25.4±3.5歳)を対象とした。分析課題は定常歩行とし、三次元動作解析装置(VICON MOTION SYSTEMS社製VICON612)を用いて計測した。身体標点として反射マーカーを被検者の両側の肩峰、股関節、膝関節、足関節・第5中足骨頭に貼付し、矢状面に投影された大腿傾斜角度、膝関節・足関節角度を算出した。踵接地からつま先離地までを100%として正規化し、得られた10名のデータから平均角度と標準偏差、変動係数(以下CV)を算出し分析した。<BR>【結果】それぞれのCVは10%よりも小さい値を示した。また大腿傾斜角度のCVは、全歩行周期を通して他の2つの関節角度のCVに比較して小さい値を示した。各々のCVでは、大腿傾斜角度と膝関節角度のCVは1歩行周期の15%付近でピークが観察された。それに対して、足関節角度のCVのピークは55%付近で観察された。<BR>【考察】本研究で得られたCVは、走行や立ち上がり動作のCVを検討した先行研究と比較して小さい値を示していた。さらに、全歩行周期を通じて大腿傾斜角度のバラツキが他のCVと比較して小さかったことから、歩行運動は全体として個体差が少なく、その中でも大腿部の運動は個体差が少ないことが示唆された。膝関節ではミッドスタンス以降でバラツキが小さく、足関節ではターミナルスタンスまでとミッドスイング以降でバラツキが小さい傾向が観察された。スポーツ動作や熟練した技法などでは変動やバラツキが小さくなることが経験的に知られており、それらが動作の習熟度やポイントとなる局面を反映することが予測される。これらのことから、股関節では歩行周期全般を通じての制御が重要であること、そして膝関節ではミッドスタンス以降の制御が、足関節に関しては単脚支持期での制御が重要であることが示唆された。一方、バラツキが大きいことの解釈では、その変動がパフォーマンスにあまり影響せず個人差が許容される部分か、そうでなければパフォーマンスとの相関が高く,パフォーマンスを決定する重要な局面であるかのいずれかであろう。しかし本研究の結果では、立脚期前半の膝関節の役割および立脚期後半からの足関節役割について言及することはできず、今後の課題であり、さらに検討を加えていきたい。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1070-A1070, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566006016
  • NII論文ID
    130005015000
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1070.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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