筋組成の違いによる至適運動頻度の検討
書誌事項
- タイトル別名
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- ―上腕二頭筋と上腕三頭筋との比較―
説明
【目的】筋力増強運動の方法の一つに、1 Repetition Maximum(1RM)を元に運動負荷量と運動回数を決定する方法がある.我々は、第41回本学術大会において、筋組成の違いにおける、運動負荷量と筋力増強効果について報告した.筋力増強で効果を得るには、運動強度・持続時間・運動頻度・運動期間の4条件の設定が必要であるが、筋組成の違いによる至適運動頻度は明らかではない.そこで今回は、筋組成の異なる上腕二頭筋・上腕三頭筋に対して、肘関節屈曲・伸展運動を週1・2・3回の頻度で実施し、筋力増強効果について検討したので報告する.<BR>【方法】被験者は、実験の趣旨を説明し、同意を得られた健常成人(男性12名・女性17名、平均28.8歳).運動課題は、上腕二頭筋は、測定肢の肘関節軽度屈曲位から90°屈曲までの屈曲運動とし、上腕三頭筋は、測定肢の肘関節屈曲90度から完全伸展までの伸展運動とした.反復速度は1回/2secとし、上腕二頭筋と上腕三頭筋の測定肢は反対側とした.運動負荷には、マルチエクササイザー(日本メディックス社製)を用い、1RM重量の70%の負荷量にて、4週間継続した.運動頻度により被験者を無作為に3群(週1回群10名・週2回群9名・週3回群10名)に分け、初回・2週間後・4週間後に肘関節屈曲・伸展動作の1RM 重量を測定した.運動の1セットの終了は、規定の反復速度で運動を継続できなくなるまでとし、最低3分間の休憩を挟み3セット行った.統計処理にはSPSSver12.0を使用し、分散分析と多重比較検定を実施し、有意水準は5%とした.<BR>【結果】初回測定時、各群とも年齢・身長・体重および全測定項目に有意差はなかった.そこで、1RM重量[kg]について、初回の値を100%として正規化し、2週間後と4週間後の値を比較した.週1回群では、両筋において1RMに有意差はなかった.週2回群では、上腕三頭筋で初回と比較して最終でのみ有意に増加した.週3回群では、上腕三頭筋で初回よりも最終で有意に増加し、上腕二頭筋では初回と比較して、中間時および最終時において有意に増加した.<BR>【考察】今回の結果より、上腕二頭筋においては週3回群にのみ筋力増強効果が得られたのに対して、上腕三頭筋においては週3回群に加えて週2回群でも筋力増強効果が得られた.筋力増強の機序からすると、超回復期に次の運動を実施することで筋力が増強していくが、週3回の運動では運動間は48時間程度、週2回の運動では72時間程度になる.そこで、上腕三頭筋では運動から48時間後も72時間後も超回復期に含まれており、上腕二頭筋では48時間後は超回復期に含まれるが72時間後には超回復期を過ぎている可能性が推測された.よって、速筋線維と遅筋線維では、運動負荷→疲労による一時的な筋力低下→超回復の期間が異なるのではないかと考える.これらより、筋力増強を目的とした運動においては、対象となる筋の筋組成によって、運動頻度を設定する必要があることが示唆された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1046-A3P1046, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566028416
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- NII論文ID
- 130004579897
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可