下肢筋力の加齢変化
書誌事項
- タイトル別名
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- ―最も筋力低下を起こしやすい下肢筋は何か?―
説明
【はじめに】下肢筋力の加齢変化を調べた研究では,膝伸展筋力についての報告が多く,80歳代では20歳代の約1/2~1/3に低下すると報告されている.しかしながら,股関節,足関節周囲筋力や足趾筋力を含めた筋力の加齢変化を調べ,筋力低下の筋による違いを検討した報告は見当たらない.本研究の目的は,高齢者と若年者の下肢筋力を測定し,筋力低下の筋による違いを検討することである.<BR>【方法】対象は,屋内歩行が自立しているケアハウス入所中の女性高齢者19例(年齢84.4±6.2歳,身長145.4±9.7cm,体重47.2±7.9kg,以下高齢女性),および健常女子学生20例(平均年齢20.4±1.4歳,身長158.7±4.0cm,体重50.1±4.3kg,以下若年女性)とした.本研究は京都大学医学部医の倫理委員会の承諾を得て行われ,すべての対象者には研究内容について説明し,参加することの同意を得た.股関節屈曲,伸展,外転,膝関節屈曲,伸展,足関節背屈,底屈,および母趾屈曲の最大等尺性筋力を測定した.股関節,足関節および母趾筋力にはHand-held Dynamometer(アニマ社製)を使用し,膝関節筋力には等尺性筋力測定器(OG技研製)を使用した.左右それぞれ1回ずつ測定し,左右の平均値をデータに用いた.母趾屈曲の筋力値は体重比(N/kg)で表し,母趾屈曲以外の筋力値はトルク体重比(Nm/kg)で表した.また,若年女性の平均筋力値を基準値(100%)とした高齢女性の値(若年比)を算出した.統計学的検定として,一元配置分散分析および多重比較を使用し,若年比を比較した.統計の有意水準は5%未満とした.<BR>【結果と考察】若年比は,母趾屈曲(67.8±29.2%)が最も高く,ついで股屈曲(62.3±17.4%),足背屈(55.8±18.8%),膝屈曲(53.0±19.7%),膝伸展(46.2±14.0%),股外転(44.2±12.9%),足底屈(43.2±18.6%),股伸展(33.0±14.7%)の順であった.最も若年比が高かった母趾屈曲と,膝伸展,股外転,足底屈,股伸展との差は有意であった.また股屈曲は足底屈,股伸展より有意に高く,足背屈,膝屈曲は股伸展より有意に高かった.以上の結果より,下肢筋の中で足趾屈曲筋は高齢者でも比較的筋力が保たれていることが示唆された.また,加齢による筋力低下は屈筋群よりも股伸展,股外転,膝伸展のような抗重力筋で大きく,なかでも特に股伸展で大きいことが明らかになった.高齢者では特徴的な立位姿勢として腰椎後弯,骨盤後方傾斜を呈するが,この姿勢は重力による股関節伸展モーメントを増大させることから,股伸展筋力の低下が関連していると推察される.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1055-A3P1055, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566055040
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- NII論文ID
- 130004579906
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可