デジタルカメラによる姿勢・動作分析への活用

DOI

抄録

【目的】<BR>臨床の場面で動作分析を行なう時には,動作を観察して正常か異常かを判断するが,その判断の多くは経験に左右される.そのため主観的であり,セラピストによっては判断が異なることも有り得る.簡便に姿勢・動作を記録し分析する時に汎用のデジタルスチルカメラ(以下,デジタルカメラ)やデジタルビデオカメラ(以下,ビデオカメラ)を使用する方法がある.さらにパソコンと画像解析ソフトを利用することで記録した静止画や動画を基に角度や距離の計測が可能である.3次元動作解析システムに比較すれば精度の面では劣るが,臨床の場面で頻繁に使用するにはこれらの機器が最も実用的である.<BR>1台のデジタルカメラやビデオカメラで撮影した画像からの動作分析では設置位置やズームなどの設定,レンズの構造上の特性である歪曲収差(ディストーション)による歪み,機種の違いなどによって様々な誤差が生まれる可能性があるが,これらを補正し精度を出来る限り高めて,そのうえで利用していけば客観的な指標として活用できると考える.そこで本研究では,静止立位と片脚立位を前額面上からデジタルカメラで撮影し,記録した静止画に補正を行ない,骨盤の側方移動距離を計測し,その誤差について検討したので報告する.<BR><BR>【方法】<BR>対象は健常成人1名であり、事前に本研究の内容を説明し同意を得た.<BR>三脚上にデジタルカメラ(Canon社製IXY DIGITAL 910IS〔有効画素数800万画素〕)を取り付けて壁に向けて設置する.デジタルカメラの高さは90cmに設定する.レンズ面から2m前方に被験者がデジタルカメラに向かって立つ.被験者は身体の輪郭がはっきりと識別できる衣服を着て,左右のASISに2cmのマーカーを付ける.被験者の立つ位置はデジタルカメラのズームを最大にしていきながら身体の中心部がレンズに収まるように調整した.被験者の50cm後方には壁があり,壁には60cmのステンレス製の定規を取り付ける.上記の環境を設定し,静止立位と片脚立位の撮影を行なった.得られた静止画はパソコンに取り込み,ADOBE社製ソフトウェアPHOTOSHOP ELEMENTS 7で補正した.レンズの歪みを補正し,静止立位と片脚立位の画像を重ね合わせる.重ね合わせた画像は調整し,両肢位が撮影された画像を作製した.その画像をフリーウェアImage Jを用いて,壁に取り付けた定規の長さを基準にして立脚側ASISの移動した距離を計測した.また,左右のASIS間の距離は実測値で計測しておいた.<BR><BR>【結果】<BR>ASISの移動距離は右片脚立位で18.6cm,左18.3cmとなり,左右ASIS間の距離は28.3cmとなった.実測値の左右ASIS間距離は25.2cmであった.<BR><BR>【考察】<BR>壁に取り付けた定規の長さを基準にして被験者の身体の変化を計測しているため,誤差が出たと考えられる.そのため基準の取り方を再考することで精度を高めていくことが可能と考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1060-A3P1060, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566056192
  • NII論文ID
    130004579911
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1060.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ