膝・腰痛等に対する民間療法の実態調査と対策

DOI

抄録

【目的】<BR>膝関節・腰部等の整形外科的疾患,片麻痺等の患者のうち,テレビや新聞・雑誌等の広告を見て,安易な気持ちで民間療法を試みている者は少なくなく,経済的損失のみならず,健康被害を被っている例もある。そこで,民間療法の実態を明らかにするために市中3病院の患者に面談調査を行った。<BR>【方法】<BR>2県3病院の神経内科・整形外科・脳神経外科の外来待合にて面談調査を行った。調査期間は,平成15年8月~平成17年7月である。<BR>【結果】<BR>統計分析可能であった325名の民間療法の体験率は,女性の70歳までは70%前後という高い体験率であった。男性では30歳未満20%,30~40歳代41%,70歳以上45%と加齢と共に増加したが,どの年代も50%以下で明らかに女性よりも低い体験率であった(p<0.01)。種類は,マッサージ機や磁気マットレス等健康機器が上位を占め,経口摂取のものではクロレラ・サメの軟骨・プロポリスなどが挙げられ,合計79種類に達した。効果は,効果あり:37%,無効: 26%,悪化:2%,不明: 35%であった。受療中の者109名のうち,91名(83%)が医師に内密に行っていた。また,医師の治療を受けずに民間療法を行っていたのは53名に達していた。費用は,10万円以上が16%おり,200万円以上使っている者もいた。動機に関しては,家族・友人・知人からの勧めが最も多く,次にテレビ・新聞/チラシ/雑誌の広告・薬局となっていた。<BR>【考察】<BR>効果ありと答えた者も,自覚症状に基づく主観的な判断であることや,多くの人が医師の治療と並行して民間療法を行っており,科学的根拠に欠ける。8割もの患者が医師に内密にしている背景としては,3時間待ち・3分診察という病院の現状がある。科学的検証がなされていない民間療法を行い,健康被害を受けたり,大金を失ったりしている患者に対して,医療機関をはじめ医師会,行政等多方面からの啓発活動が必要である。本年の医療保険制度の改定により,入院期間の短縮,医療費の自己負担の増大がもたらされた。その影響で医療機関への受診が抑制されて,民間療法に頼る人が増えていくと予想される。医師や,理学療法士も含めたコメディカルスタッフによる十分なインフォームドコンセントを伴った診療体制作りが望まれる。<BR>【まとめ】 <BR>325名の市中3病院の患者に,膝・腰痛等に対する民間療法の面談調査を行った。体験率は男41%,女58% で,マッサージ機や磁気マットレス,クロレラ,サメの軟骨等79種類のものが用いられていた。動機はクチコミが最多であった。民間療法を行っていたもので,医師の治療を受けていないものが53名おり,医師の治療は受けていたが,医師に相談していた者は18名(17%)に過ぎなかった。患者が医療機関や行政に気軽に相談できる体制作りが必要である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), E1058-E1058, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566099456
  • NII論文ID
    130005014428
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.e1058.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ