下肢伸展挙上角度の違いによる体幹筋と大腿四頭筋の活動量変化

説明

【目的】 下肢伸展挙上(以下SLR)は、体幹筋や股関節屈筋、膝伸筋の筋活動が必要であり、臨床的に大腿四頭筋や腹部の筋力増強手段として用いられている。SLR時に大腿四頭筋や体幹筋活動を個々に注目した報告は見受けられるが、SLR角度の違いによる四頭筋、体幹筋活動の協調的な変化に関する報告は少ない。そこで今回、SLR角度が、四頭筋活動や体幹筋活動にどのような影響を及ぼすのかを検証したので報告する。<BR>【方法】 対象は、同意の得られた本学健常男子学生21名(年齢21.4±1.5歳)とした。課題動作は、頭部接地、非挙上側膝関節120度屈曲、足底接地での等尺性収縮7秒間のSLRである。挙上側足関節角度は任意とし、底背屈筋の随意的な収縮を行わないように指示をした。SLR角度は15度、30度、45度の3パターンにわけた。同一施行を3回ずつ、合計9回行った。筋電図の測定には、表面電極を用い、挙上側大腿直筋(RF)、内側広筋斜頭(VMO)、内側広筋長頭(VML)、外側広筋(VL)と、両腹直筋(RA)、腹斜筋群(OA)の筋腹中央、L4レベルの両側脊柱起立筋(ES)に貼付した。筋電図処理は、等尺性収縮中のうち3秒間の積分筋電図(IEMG)を求め、同一施行で平均値を求めた。求めたIEMGはそれぞれ、15度のSLR時の積分値を100%として正規化した。統計学的処理は、一元配置分散分析(ANOVA)を行った。2群の差の検定は、Scheffeの多重比較検定を行った。なお、有意水準は5%とした。<BR>【結果】 SLR角度が大きくなるほど、膝伸筋ではVL活動量が有意に増加し、VMOも有意差は無いが増加傾向がみられた。一方でRF活動量は有意に減少した。体幹においては、両OA、左ES活動量が有意に増加し、右ES活動量も有意差は無いが、増加傾向がみられた。一方、右RA活動量は有意に減少し、左RAも有意差は無いが、減少傾向がみられた。<BR>【考察】 RF、RAともに、SLR角度が大きくなるほど起始と停止が近づくため、筋の張力が低下し、活動量が低下したものと考えられる。また、モーメントアームが短くなることにより、股関節伸展モーメントが減少し、それに伴い、RF、RAの筋活動量も低下したことも理由として考えられる。一方、RFの筋活動量減少により、膝関節の伸展力も減少する。VMO、VLの活動量増加は、それを代償するために起きたものと考えられる。SLR挙上により、骨盤には後傾、挙上側回旋の運動が起こり、角度が大きくなるほどその運動は大きくなる。そこで、OA収縮が回旋運動を、ES収縮が後傾運動を抑制し、骨盤を固定したためにOA、ESの筋活動量が増加したのではないかと考えられる。<BR>【まとめ】 臨床においてSLRを用いる際には、目的とする筋によって、SLR角度を変化させる必要があることが示唆された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1313-A1313, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566126720
  • NII論文ID
    130005015064
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1313.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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