補足運動野に損傷を有する患者の歩行獲得に関する考察

説明

【目的】補足運動野(以下SMAと略)は、動作開始、終了のタイミングやリズムや記憶による動作手順などの機能を有する.Goldbergは、動作発現のモデルの中で自己ペースの運動(記憶)と外的ペースの運動(刺激)に分類し、SMAが自己ペースの運動の回路の一部を担うことを報告した.しかし、SMA損傷患者の障害像は理解できるがどんな手順で歩行獲得させるのか理解困難状況でもある.今回、SMA損傷の2症例から歩行獲得の過程を検討したので報告する.<BR>【症例1】73歳.男性.診断名:脳出血 病巣:左SMA 意識レベル:E4V4M6PT開始:発症5日目端座位から開始.grade:U/E7 H/F10 L/E1 右上肢は動かすことは可能だが、下肢は、弛緩性麻痺.7日目:PT室にてLLB装着し右側への荷重を中心とした立位練習開始.17日目に平行棒にてSLB立位保持可能.しかし、歩行時の右足部のすくみ足出現.振り出しのタイミングの獲得のため、右足部の挙上を口頭で誘導とともに右遊脚期と左立脚期を区別させるため左下肢へコンプレッションをかけ右足部の挙上を可能にした.さらに、歩行リズム獲得のため連続的に行う.23日目、口頭指示で平行棒内歩行可能.装具をはずしても歩行可能.しかし、杖使用はできず独歩練習.29日目、SLBを装着せずに廊下歩行が可能になる.<BR>【症例2】84歳、男性.診断名:脳梗塞 病巣:左SMA 意識レベル:E4V5M6grade:U/E7 F/H10 L/E2.発症後2日目より端座位からPT開始.端座位は見守り程度.起立を施行するが右下肢の支持性なし.6日目にPT室にてLLB装着にて立位・歩行練習開始.膝折れが生じるためLLBはロックが必要.右下肢に荷重する練習を開始.右下肢の振り出し困難.14日目:起立が可能になりつつあるため、SLBに装具を変更.15日目:右足部はすくみ足傾向のため、左下肢にコンプレッションをかけ右足部の挙上を誘発.連続した歩行動作を獲得させるために連続的にコンプレッションをかけ歩行練習施行.18日目に平行棒内歩行が可能になったが4点杖使用はできず.手引き歩行を行ったところ装具無しで歩行可能.32日目に院内独歩可能<BR>【考察】下肢の麻痺が強く、立位練習にLLBが必要であったが、SMA領域と下肢・体幹領域が近接しているために、下肢に強い麻痺が生じると考える.すくみ足が出現し歩行が困難であったのはSMAが、両側性支配であり健側のSMAが患側を支配するために交互運動を困難にさせる.遊脚期と立脚期の区別するための外的刺激は、右足部の挙上と左下肢の支持性に有効に働いたと考えられる.4点杖の歩行は新しい動作でありSMAの障害では独歩のほうが記憶に由来する運動であるため杖使用は、独歩が完成した後、安全を図るため行ったほうが良いと考える.<BR>(論文作成にあたり本人、及び、院内倫理委員会の承認済)

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P3329-B3P3329, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566174336
  • NII論文ID
    130004580600
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p3329.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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