股関節開排角度とオムツ交換の関係性
説明
【目的】<BR>オムツ交換に難渋しているケースでは,股関節屈曲内転拘縮による開排制限を有していることが多くみられる.本研究ではオムツ利用者の平均的骨盤大腿モデル(以下,モデル)を作成し,オムツ交換作業時に必要な最小限の股関節開排角度(以下,開排角度)を明らかにすることとした.<BR>【方法】<BR>1)モデルの作成:介護療養型医療施設に入院中で,障害老人日常生活自立度Cレベルのオムツ利用者55名の大腿長,大腿周径,鼡径部周径,上前腸骨棘から恥骨結節線までの距離,左右ASIS間距離,両大腿最近位部内側間距離,大転子最近位部と恥骨結節線間距離,左右上前腸骨棘の頂点を結んだ線と腹部中央部の高低差,恥骨結節線と鼡径線のなす角度の9項目の測定し,男女共通のモデルを作製した.2)開排角度の測定:ケア従事者226名に対し,股関節屈曲拘縮を想定して,モデルの股関節屈曲角度0度,30度,60度,90度,120度の5条件のうち,くじ引きにて3条件を抽出させ,それぞれの屈曲角度の最大内転位から開排を行わせた.外転をプラス,内転をマイナスとして記録し,開排角度は左右股関節外転角度の和とした.加えて,作業空間の違いをみる目的でモデル大腿近位部の両大腿内側間距離の測定を行った.研究の実施にあたっては対象者に説明を行い同意を得た.<BR>【結果】<BR>開排角度は股関節屈曲位0度では10〔5,20〕(中央値〔25%タイル値,75%タイル値〕)度,30度では10〔5,20〕度,60度では15〔5,20〕度,90度では15〔10,20〕度,120度では20〔10,20〕度であった.両大腿内側間距離は最近位部の恥骨結節線付近では開排角度-10度で4.0cm,10度では7.5cm,15度では9.0cm,20度では10.5cmであった.<BR>【考察】<BR>股関節屈曲角度が増加するとオムツ交換に必要な開排角度が増加する傾向を認め,開排角度が増加すれば両大腿内側間が広がり作業空間は拡大した.背臥位で股関節屈曲角度が増加すると大腿部によって作業空間および視野が狭くなるために,開排角度を増加させていると推測される.臨床上,下肢拘縮では両側に屈曲拘縮を生じる両側屈曲位型が多くみられ(武富と市橋1994),股関節の屈曲拘縮が強いと股関節外転角度が減少する傾向があるとの報告がある(三好ら1997).股関節屈曲が増加すれば開排角度が減少する利用者の実際と,股関節屈曲が増加すれば開排角度を大きく必要としているケア実施者の要求は一致しておらず,オムツ交換時の関節可動性の課題解消が必須である.<BR>【まとめ】今回,オムツ交換作業時に必要な開排角度について明らかにした.今後は,股関節屈曲拘縮の左右差や,骨盤の回旋,下腿部の重量や膝関節屈曲角度等の条件を加えてさらなる検討を行う.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), E3P1182-E3P1182, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566184064
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- NII論文ID
- 130004581212
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可