上肢肢位の違いによる呼吸補助筋活動の検討
説明
【目的】本研究の目的は、上肢挙上及び上肢支持姿勢で労作を行わせた場合の呼吸補助筋の活動変化を検討する事である.<BR>【方法】対象は、本研究の趣旨を説明し同意を得た健常男性9名(平均年齢28.8±1.8歳).ストレングスエルゴ(三菱電機エンジニアリング社製BK-ER-003)を用い、両上肢90度前方挙上位(挙上位)及び両前腕での上肢支持位(支持位)の2つの条件で運動負荷を行った.運動負荷は、40wattsのウォームアップ3分を測定した後、毎分20watts増加させるランプ負荷で自覚的症候限界域まで行った.さらに、運動負荷中に換気負荷をかける目的で600mlの外的死腔負荷を行った.筋電図の測定にはNeuropack MEB2200(日本光電社製)を用い、測定筋は前斜角筋、僧帽筋上部とし、表面電極を用い双極導出に測定した.呼気ガス分析器(ミナト医科学社製AE-300S)にて流量変化、酸素摂取量、分時換気量を計測した.流量変化および筋電図は、サンプリング周波数1kHzでA/D変換したのち波形解析ソフトChart5(ADI社製)で分析した.筋電図は最大随意収縮時の平均振幅を100%として正規化(%MVC)した.<BR>【結果】両条件で最大運動強度(挙上位210.6±11.3watts、支持位212.2±12.6watts)、最大酸素摂取量(挙上位39.6±2.2 ml/kg/min、支持位38.5±2.6ml/kg/min)、最高分時換気量(挙上位138.6±6.0l/min、支持位145.5±7.4l/min)に有意差は見られなかった.前斜角筋は、挙上位及び支持位ともに約70%V(dot)O2max以上の運動強度で呼気相(挙上位平均2.6±0.3%MVC、支持位平均1.8±0.4%MVC)に比較し吸気相(挙上位平均3.1±0.5%MVC、支持位平均2.7±0.6%MVC)に有意(P<0.05)に高い筋活動が出現し吸気に同調した筋活動がみられた.しかし、僧帽筋上部は、吸気に同調した筋活動は認めなかった.また、僧帽筋上部は、運動中持続的な筋活動が観察され、ランプ負荷開始から運動終了までの筋活動は支持位(平均2.9±0.6%MVC)に比べ挙上位(平均11.4±1.7%MVC)で有意(P<0.01)に高い筋活動を示した.<BR>【考察】挙上位及び支持位での運動中、前斜角筋は吸気と同調した筋活動が認められ、上肢肢位関係なく、吸気筋として活動できる筋であることが示唆された.これは、前斜角筋が上肢挙上運動に直接的には関与する筋ではないためと考える.僧帽筋上部については、両条件ともに吸気に同調した筋活動は認めなかった.僧帽筋上部の吸気運動に対する役割は、胸郭の上にありその重みで胸郭の運動を抑制する上肢を持ち上げ、その結果、胸郭が拡張しやすくすること、と考えられる.そのため、挙上位では、挙上動作に伴う僧帽筋活動が吸気運動の補助となっていると思われる.また、支持位では上肢の重みは前腕で支持されるため、吸気に同調した僧帽筋活動を行う必要が少なくなり、その結果、呼吸筋活動が見られなかったものと考えられた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), D3P3527-D3P3527, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566202112
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- NII論文ID
- 130004581184
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可