障害者投てき競技における調節式スローイングチェア(座投一)の開発・適応について

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抄録

【はじめに】<BR>障害者の陸上競技における投てき競技は、体幹や下肢機能障害を補うべく開発されたスローイングチェア(TC)を使用することで、脳性麻痺者に代表される重度障害者にとっても比較的参加しやすいスポーツ種目の一つであるが、選手の障害特性や運動機能に適合したTCの作成は容易ではない。そこで様々な障害像に適応できる投てき競技用調節式TC(座投一)を開発したので報告するとともに、座投一の試用により競技能力の向上を認めた障害者スポーツ選手4名を対象に、投てき運動を運動学的に分析し、座投一の調整が投てき運動に及ぼす影響について検討した。<BR>【構造】<BR>座投一は、40cm四方の座面に65cm~75cmの高さに調節可能なスペーサーを有する4脚からなる台座部分と角度・高さ・奥行きが調節可能なバックレスト、様々な足部の設定位置条件に対応した滑り止め加工を施したフットレスト、さらにパーツの組み合わせによりあらゆる位置に設置可能なグリップなどによって構成される。これによって座面の高さ、奥行き、角度と左右下肢の固定位置、さらにグリップ位置が選択可能となる。その他にも各部に身体固定用のパッドやベルトが装着できるようになっている。<BR>【対象・方法】<BR>3名の円盤投げ選手:二分脊椎、脳性麻痺、C6不全損傷各1名および1名の砲丸投げ選手:Th5不全損傷を対象に座投一を試用し、投てき距離の向上を図った。従前から使用していたTC(oldTC)と調整後の座投一(newTC)による投てき動作を,それぞれ6台のデジタルビデオカメラで撮影し、三次元解析装置ToMoCo Vm(東総システム社製)により解析した。<BR>【結果】<BR>すべての選手において、投てき開始時の投射角と両下肢の位置関係が、old TC に比べnewTCではより平行になっており、体幹の軸回旋運動も可能となった。投てき距離も向上し、二分脊椎選手Aは、ジャパンパラリンピック陸上選手権大会において日本新記録を達成した。<BR>脳性麻痺選手Bは Disc release時の体幹の前傾角度がoldTCの17.5°からnewTCでは11.9°に減少し、円盤の初速度も、8.4m/secから10.1m/secに改善した。<BR>【考察およびまとめ】<BR>座投一の使用により、実際のフィールド場面において様々な投げ方で試行を繰り返すことができ、また、それらの動作について理学療法士による運動学的考察を加えることで、より最良に近いTCのセッティングを完成させることが可能となり、その結果、競技成績の向上につながった。座投一を養護学校、障害者スポーツセンター、障害児・者施設等に設置し、障害の程度に関係なく、誰でも気軽に投てき競技に参加、体験できる環境づくりに努めることで、重度障害者にとってのスポーツ競技領域における可能性を拡大していくとともに、自立生活支援の一助として寄与できることを期待する。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), E1054-E1054, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205566229376
  • NII論文ID
    130005014424
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.e1054.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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