下肢アライメントが片脚立位時の重心動揺に及ぼす影響

DOI
  • 熊王 寛人
    津軽保健生活協同組合健生病院リハビリテーション科 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 尾田 敦
    弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 成田 大一
    弘前大学大学院保健学研究科健康支援科学領域 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 奥山 真純
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 加藤 望
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 清水 隆幸
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 西岡 健太郎
    津軽保健生活協同組合健生病院リハビリテーション科 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 溝畑 日出昌
    財団法人秀芳園弘前中央病院 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻
  • 上村 豊
    介護老人保健施設えぼし 弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻

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抄録

【目的】片脚立位時の重心動揺には,様々な因子が影響を及ぼしている。その中で足部は身体の中で唯一床面と接触しており,姿勢制御に関わる重要な運動器官である。しかし足部が重心動揺に及ぼす影響に関する報告は機能的因子に着目したものが多く,足部アライメントのような構造的因子に着目したものは少ない。そこで,本研究の目的は片脚立位時の下肢アライメントに着目し,重心動揺との関係を明らかにすることである。<BR>【対象】下肢に整形外科的疾患の既往のない健常女性28名(平均年齢21.4±1.9歳,平均身長158.8±5.7cm,平均体重53.0±6.9kg)である。<BR>【方法】非利き足にて片脚立位時の重心動揺をアニマ社製GRAVICORDER GS3000を用いて測定し,総軌跡長と外周面積を評価値として採用した。開眼で両上肢を組んだ状態とし,対象自身が安定したと感じた時点から30秒間測定を行った。またPedoscope(接地足底投影器)上で片脚立位となり,2台のデジタルカメラで姿勢を前方から,足底接地面を後方から同時に撮影した。得られた画像はパソコンに取り込み,Canvas8を用いてQ-angle,第1趾側角度,内反小趾角,Leg-heel angle(LHA),踵骨外反傾斜角を求めた。また画像から膝蓋骨の向きを正常・Squinting patella・Frog-eye patellaの3つに分類した。アーチ高率は片脚立位時の舟状骨高と足長から算出した。果部捻転角は背臥位にて測定した。統計処理にはSPSS 11.0Jを用い,Pearsonの積率相関係数(有意水準5%未満)を行い,重心動揺と各変数の関連性を検討した。<BR>【結果】各変数の平均は,アーチ高率12.8±2.1%,顆部捻転角13.9±5.2°,Q-angle14.4±6.3°,LHA12.0±3.4°,踵骨外反傾斜角-1.5±2.9°,第1趾側角度11.3±5.6°,内反小趾角11.9±5.6°であった。膝蓋骨の向きは,正常39%,Squinting patella54%,Frog-eye patella7%であった。総軌跡長と有意な相関がみられたのは,LHA(r=-0.410,p<0.05),内反小趾(r=0.382,p<0.05)であり,外周面積と有意な相関がみられたのは,LHA(r=-0.480,p<0.01)であった。上記以外には,有意な相関はみられなかった。<BR>【考察】内反小趾角が有意な正の相関を示したことにより,片脚立位時の足底外側への安定性に対し,小趾の機能が重要であることが示唆された。またLHAが有意な負の相関を示したことにより,足底外側への重心移動に対し,小趾機能の他に前足部・距骨下関節を回内させ,足底接地面積を増加させることで安定を増しているのではないかと考える。この距骨下関節回内に伴い,足部が柔軟となり,足趾機能がより働きやすくなっているのではないかと考える。本研究におけるLHAの平均値12.0°は正常範囲内ではあるが,対象の半数以上にSquinting patellaがみられたことから,下腿の回旋に伴う距骨下関節での動きが片脚立位を安定させる要因として関連していると考える。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C1463-C1463, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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