加齢が立位振り向き動作に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
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- 体節回旋角度,角速度,身体重心の位相面解析による検討
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説明
【目的】<BR> 何気なく行う立位での振り向き動作は、高齢者の転倒時の動作の一つと報告されている。そこで本研究は振り向き動作による転倒の特徴を調べる前段階として、静止立位時の振り向き動作を、体節回旋角度と振り向き開始の運動、身体重心座標の挙動に着目し、高齢者が行う振り向き動作で転倒に至る危険性の原因を知る手がかりを得ることを目的として行った。<BR>【方法】<BR> 高齢者10名(男性5名女性5名、身長155.15±7.5、年齢71.5±6.4、以下高齢群) 若年者10名(男性6名女性4名、身長168.11±7.1、年齢23.1±1.5、以下若年群)の被験者の身体に反射マーカを貼付し、両足部内側縁間を身長の10%の距離とし、両上肢を胸の前で組ませた。被験者は前方に設置したライトの点灯を合図に振り向き動作を開始し、後方に設置した標的が見えるまで振り向き、5秒間振り向き姿勢を保持するように指示した。振り向きの動作速度は快適速度、方向は軸足と同側とした。振り向き動作の様子を三次元動作解析装置VICON MX(VICON PEAK社製)を用いて収録し、各反射マーカの空間座標より頸部、体幹、股関節の関節角度を算出した。また振り向き動作開始の運動を知るために角速度を算出し、動作の安定性の指標として左右方向の身体重心の軌跡に対し位相面解析を行った。統計学的解析では各関節の角度に対し独立したt検定を用い有意水準は0.05未満とした。なおこの研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】<BR> 体幹の回旋角度は高齢群34.9±8.7°若年群47.4±9.3°と高齢群の方が有意に小さかった(p<0.01)。頸部と股関節の回旋角度には有意差は認められなかった。各関節回旋運動の角速度からみた振り向き動作開始の運動は、若年群高齢群ともに股関節の回旋運動からが多かった(高齢群7名若年群9名)。しかし振り向き動作終了時における高齢群の左右方向の身体重心位相面は、若年群に比べ身体重心座標の収束が定性的には遅れることが示された。<BR>【考察】<BR> 高齢群の方が若年群に比べ体幹回旋角度が有意に小さかったのは、一般的に加齢に伴い脊柱の柔軟性が失われていくためと考えられる。若年群と高齢群の多くは振り向き動作が股関節の回旋運動から開始されることから、股関節機能の重要性が示唆された。しかし高齢群は振り向き動作終了時における左右方向の身体重心の位相面の収束が遅れているため、これが高齢者転倒の要因の1つとなると思われる。<BR>【まとめ】<BR> 本研究の結果、高齢者の振り向き動作は体幹の回旋角度が小さく、動作開始には股関節の回旋運動が重要であることが示唆された。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C1472-C1472, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205566315648
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- NII論文ID
- 110006801029
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可