運動指導と歩数計等の配布がおよぼす効果について

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  • 糖尿病患者における調査

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抄録

【目的】糖尿病患者の運動療法を継続させるため、生活習慣記録計等を用いて定期的に介入し効果を上げたという報告は多い。そこで今回、最小頻度の関わりでどの程度の効果を得ることができるのかについて調査を行い、若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【対象】当院糖尿病友の会第3回総会参加者130名のうち、前年の総会にも参加した85名を対象とした。なお、運動が禁忌の者は除いた。<BR><BR>【方法】第2回総会にて、セラバンドを用いた体操など屋内で行える運動に関する講義・実技指導および歩数計の装着方法や活用方法の指導を行った。そして、参加者に歩数計(タニタ社製FB-715)とセラバンドを配布した。次に、翌年の第3回総会にて自己記入式アンケートを用いて、年齢、性別、歩数計の使用期間、運動の種類・時間(一日あたり)・期間等の変化について調査し即日回収した。また、歩数計配布の約1年前、配布時頃、配布の約1年後(以下、1年前、配布時、1年後)におけるHbA1cおよびTG、HDLコレステロールの変化の比較を行った。<BR> なお動機付けのため、配布から数ヶ月後に運動療法について記載した会報を手渡したり、来院時に糖尿病教室への参加や運動継続を促す声かけ等を行った。<BR><BR>【結果】アンケート回収が可能であったのは、2型糖尿病患者84名(男性41名・女性43名)である(回収率98.8%)。歩数計の使用や運動を6ヶ月以上継続した者(継続群)は36名(男性21名・女性15名、年齢70.7±7.7歳)であり、HbA1cの変化は、1年前、配布時、1年後の順で7.3±1.1%、7.4±1.1%、6.8±1.0%であった。そして継続期間が6ヶ月未満の者(非継続群)は48名(男性20名・女性28名、年齢69.0±7.8歳)であり、HbA1cの変化は、1年前、配布時、1年後の順で7.6±1.1%、7.7±1.0%、7.9±1.1%であった。なお、TGとHDLコレステロールに有意な変化はみられなかった。有意差が認められたのは継続群における配布時から1年後のHbA1cの変化のみであった。<BR> 運動の種類は、配布時が歩行、ゲートボール等であったが、1年後はセラバンドを用いた運動が22.2%となった。継続群の運動時間は、配布時23.9±7.3分、1年後27.9±7.9分と有意に増加した。<BR><BR><BR>【考察】今回、講義だけで終わるのではなく運動を始めるもしくは継続するきっかけとなる物を与え、最小頻度の関わりでモチベーションを維持するよう働きかけた。継続群のほとんどは配布時すでに運動を行っていたため、変化ステージでは行動期であった。この時期の介入法は 1.「より高度な知識と技術の提供」2.「問題行動解決技術」3.「再発予防対策」となっており、今回の関わりは維持期への移行を促すうえで適切であり、わずかだが血糖改善につながったと思われる。<BR> 運動習慣の継続を図るにはオーダーメイドの運動処方が理想的だが、今後も変化ステージ別に集団指導を行うなど、人的にも設備面でも負担の少ない運動処方の方策を探っていきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), D0386-D0386, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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