間質性肺炎患者に呼吸リハビリテーションを施行した一症例の検討

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説明

【目的】<BR> 間質性肺炎(IP)とは、肺間質の炎症性変化を主徴とする進行性の肺疾患である。日本呼吸器学会の特発性間質性肺炎診断と治療の手引きでは、呼吸リハビリテ―ション(呼吸リハ)の介入について推奨されているが、プログラム内容や長期効果については、明確化されていないのが現状である。今回、IP患者に3年間呼吸リハを施行した症例を経験したので報告する。<BR>【方法】<BR> 治療経過及び血液ガス、スパイロ、6分間歩行試験(6MD)の距離、最低SpO2、呼吸困難感の評価に修正Borg Scaleで評価し、最大呼吸困難感(最高BS)をカルテより後方視的に調べた。また、血液ガスと6MDの相関係数を算出し、呼吸リハの効果について検討した。<BR>【症例紹介及び経過】<BR> 症例は、70才、男性。診断名は、間質性肺炎、肺気腫。経過は、平成13年9月に間質性肺炎と診断。平成16年6月、在宅酸素療法(HOT)導入し呼吸リハ開始となった。導入時のスパイロは、%VC:125.1%、FEV1.0%50.39%、%DLCO42.9%、KL-6は250。CRP0.01、WBC8200。PSLの内服は17.5mg/日。退院後、外来呼吸リハを月に1回、下肢の筋力強化と6MDの評価を中心に行なってきた。平成19年6月、肺炎にて入院。7月に退院したが、8月肺炎にて再入院となった。入院中のリハは、呼吸・肺痰介助などコンディショニングから開始し、運動療法へとプログラムを変更しながら行なってきた。退院前のスパイロは、%VC117.1%、FEV1.0%66.1%。CRP0.13、WBC7100。PSLの内服は15mg/日だった。<BR>【結果】<BR> 呼吸リハ開始後の平均PaO2は、1年目、65.6±2.8Torr。2年目、64.5±8.1 Torr。3年目、57.3±2.5Torr。6MDは1年目、距離271.1±28.4m、最低SpO2:87.9±1.8%、最高BS:3.5±1.2。2年目、距離:271.7±23.2m、最低SpO2:85.7±2.6%、最高BS:3.5±1.4。3年目、距離:250±33.2m、最低SpO2:83.3±1.2%、最高BS:5±0.5。相関係数は、PaO2とSpO2は、r=0.6だった。しかし、呼吸困難感との関係では、PaO2とBSはr=-0.02に対し、 SpO2とBSはr=-0.7と相関関係を認めた。また、歩行距離とBSはr=0.4だった。<BR>【考察】<BR> KL-6の高値を認めないIP患者に対する呼吸リハを施行してきた。SpO2とBSは有意な相関関係を認めたが、歩行距離とBSは相関関係を認めず、呼吸困難感の増強による歩行距離の低下を認めなかったことから、下肢の筋力強化などを中心とした呼吸リハが有効だった可能性が示唆された。しかし、呼吸リハ開始後3年目には、運動耐容能の低下と呼吸困難感の増強を認め、呼吸リハの効果は2年程度とも考えられた。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), D0369-D0369, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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